蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

知らない星座を見て名前を当てられる人はいない

座は88ある。

88もあってどうするのかまったく想像がつかないのだが、「必要があって88作った」というよりも「なんか気付いたら88できてた」という解釈の方が合っている気がする。

大昔の夜空は闇を遮るものなどなく、さぞ美しい星空を拝めたことだろう。

暗くなるとやることもないから、とりあえず星空を眺めていたかもしれない。暗くなってやることといえば殺人かSEXか睡眠か、星空を眺めることくらいに決まっている。ニンテンドースイッチもない時代だからね。

大昔の人は日の入りと共に眠っていただろうから、起きて星空を眺めていた人はちょっと不良だったかもしれない。当時は今と違って日々の食糧調達に追われ明日をどう生きるかを人々が考えていた時代、何事も「実際」が重んじられていただろうからフィクションを思い描くなんてもってのほかだったろう。

不良が、星空に思いを馳せ、物語をした。

ロマンチックな星空だ。南風に吹かれながらあなたを抱きしめていたい、とか言うかもしれない。

あるいは。あるいは夜は狩りをしていたかもしれない。闇夜まぎれて獲物が罠にかかるのをジッと待っていたのだ。ふと夜空を見上げると満点の星空。暇つぶしに星座の物語を編んだかもしれない。

もしくは。もしくは夜の海の上で星座は作られたかもしれない。陸の夜ですら暇なのに、何もない海の上なんて世界が滅んだ後みたいな静けさで気が狂いそうになるような暇に時間を蝕まれるだろう。星座物語なんて星の数より多く作れる。それに航海において星座は実用の側面もある。方角を知る道標になるのだ。

 

そのようにして、とにかく星座は88作られた。

それにしても星は星の数ほどあるから100でも200でも星座を作れるはずだが、なぜか88で止まっている。なぜだろう?

私が思うに、普通にネタ切れになったのではないだろうか?

星座名一覧

このサイトに全星座名が網羅されている。実際に見てみよう。

つらーっと上から順に見ていくと、アンドロメダ、一角獣、射手、とお馴染み(?)の星座が並んでおり、神話的なモチーフなんだなと発見もある。アンドロメダがなんなのかよくわからないが、神話に出てくるなんらかの人で災厄を受けるに違いないだろう。

そんな中唐突に出てくるのが22番だ。

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髪の毛座。

イデアが一周しちゃってる。

悩んだ末に、そうだ、この手があったか、ってモチーフの選択になってる。髪の毛なら形とか考えなくても一本線でいいしね。

イデアに詰まったような星座は他にもある。

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74〜77の「南」シリーズ。

南の空にしか見えないから南と付いてる(逆に北極海で見えたらこいつらはなんなんだ)。

考えついた人は南へ航海してこれらを見つけたとき、「やった」と思ったことだろうな。南シリーズで数を稼げる、と。

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86番 ろ座

ろ、て。

炉なんだけど、一文字だから変な感じだ。

なんか新しい星座作らなきゃってときに辺りを見回したら炉があったから「ええい、これでいいか」とやっつけたみたいな名前だな。

ラジオネーム急いで考えるときにその辺にあったメモに書いてあったこととか目についた雑貨を名前にしちゃうみたいな。

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64番 へび座   65番 へびつかい座

これも「蛇がいるなら蛇遣いもいるだろ」って発想なのか。

イデアが2周3周してなんとか思いついたみたいな苦肉の策感がどうしても否めない。

 

これはあくまで私の所感であり、本当は作られるべくして作られた星座たちで、それぞれにエピソードがある。

気になる人は自分で調べるべきだし、ここに書いてあることをそっくりそのまま鵜呑みにしちゃいけない。鵜呑み座になるよ。本当に。

 

東京では夜空を見上げても星はあまり見られない。そこに見えない星たちに思いを馳せてみるそんな時間もない。

でもたまには星座のことを考えてみるのも一興だ。

現代人は暇を怖がる一方で、暇を求めているとは思わんかね?

どこかに浮かぶ髪の毛座が僕にそう問う。

一喜一憂

職活動をしている。

転職活動は通常の就活と同じように、基本的にはエントリー→書類選考→面接 という流れをとる。

エントリーの段階で履歴書や職務経歴書や志望動機を提出したり、WEBテストを受ける場合もある。

「貴社に入りたいです」

「よござんす。入れてあげましょう」ってわけにはいかないのだ。告白をしたすべての人と付き合えるわけじゃないのと同じように。注文すれば出てくるレストランとはわけが違う。

段階を踏み、双方が熟考を重ね、最終的には縁によって導かれる。仕事探しとはそういうものだ。

とは割り切っている部分もあるけど、転職は新卒の就活とはまったく趣が異なっていて、仕事を見つけることに対して私の場合は転職の方がずっと切実になっている。

はやく今の仕事から解放されたい。この苦しみから逃れたい。

結婚もしてもはや人生は私の手を離れて二人のものになっているから、月収が低すぎるところや福利厚生が疎かなところでは心許ないし、斜陽企業に入ってもどうしようもない。だけど同時に私の心を救う会社でなければならない。

もしも転職できなかったら?他の同僚がまったく同時に転職を考えていて先を越されたら?すべての選考に落ちたら?

不安の種はいくつもある。

 

書類選考に出してもすぐに返事が来るわけではない。ほんとうはすぐに来てほしいのだけど、おおよそ3営業日から1週間以上時間がかかる。ラブレターの返事に1週間かけられたら「こりゃアカンな」と思うのと一緒で、返事が来ないとソワソワして糞詰まりの羊みたいになる。でも書類選考は中学生の恋愛とは違うのだ。

並行していくつか選考に臨んでいるけど、企業側の検討期間がかぶるとこちらは一時待機の状態になって非常にもどかしく、不安の種はどんどん膨らんで、現在の仕事にも暗い影を落としてひどく憂鬱になる。

おれはなにをやってるんだろう。とか思う。人生はもう終わったも同然なんじゃないか。とか思う。巨大な鷹に攫われて山陰地方へ行ってしまいたい。とか思う。

この数日間「待機期間」になってしまったので気持ちは暗澹たるものだった。

 

火曜日、先週一次面接を受けた企業から結果の連絡がきた。

二次面接の案内だった。

とても嬉しい。ガッツポーズ。ちょっと歌うたった。嬉しくて。

しばらくすると書類選考を出していた他の企業から「まことに残念ですが」と連絡が来た。ふつうに落ちた。

書類選考で落とされるとは思ってなかったのでいささかショックだった。書類選考で落ちると「歯牙にも掛けない」という難しい言葉が思い浮かぶ。たしか「山月記」に出てきた言葉だったろうか。名をコボウに連ねて次いで江南尉に補せられ。性、狷介。ショックで現実逃避が止まらない。

でもまぁ、ひとつは進んだわけだし、感情はどちらかと言えばプラスに向いている。たぶん。大丈夫だ。

最近、テレワーク中、1時間に27回くらい「大丈夫」と自分に言い聞かせている。

なんとかなるといいな。

一喜一憂の日々。

結婚した

生時代から付き合っていた人と結婚した。

いま私の左手の薬指にはプラチナのリングが、まだ自分の居場所を決めかねるように嵌められていて、それは春の小学一年生がランドセルを背負っている姿や18歳で初めてスーツを着た青年の恥ずかしいような相貌を思い起こさせる。まだ全然馴染んでいなくて左手の薬指には違和感がある。

2年も同棲していたし、区役所に婚姻届けが受理されたとはいえ「夫婦」になった感じはあまりしない。同棲ってぬるっとはじまってぬるっと終わる点でメリハリがつきにくい。

同棲をはじめた頃ブログにその旨を書いたら、年齢が上の方の読者から「同棲するなんてふしだらだ」みたいな意見を貰ったことがある。メリハリがつかないだろうし終わりがない。自分たちの立場をきっぱりとしない。女が捨てられることが多い。など。

まったくイメージばかりが先行して物を言われるので困ったものだが、まぁ、気持ちはわかる。困ったものだが、と書いたけど困ってもいない。いろいろな意見があっていい。

同棲をはじめた最初から結婚を前提にしていたし、なんなら同棲前からお互いの両親に挨拶に行って了承を得ていたこともあって「意見」はまったく的外れだったのだが、たしかにメリハリがつかなくなるというのは一理あった。今だってそうだ。夫婦になった感じがしない。

でもさ、いいじゃん。同棲って言葉の響き。

恋人と一緒に暮らせるのって素敵じゃん。若いうちにできることなんだから。

青春なんだよ。

いろいろな意見があっていい。私は同棲、すごく楽しかった。よかった。いい思い出になった。

 

このブログでは彼女のことをずっと「恋人」と書いてきた。

「彼女」はどうしても三人称単数の代名詞な感じがしたし、「恋人」と書いたほうが本人の愛らしさを表していると思えたのが理由だ。

でもこれからは「妻」になっちゃうんだな。

もう「恋人」と書けないことに寂しさを覚える。もっと恋人のことを書いておけばよかった。恋人という響きの、舌の上を転がるくすぐったさがそのうち懐かしくなるのだろう。

 

書類上、私たちはたしかに夫婦になった。もう恋人じゃない。夫婦だ。単なる同居人ではなく、パートナーだ。

でもまだお互いに「夫婦」になった感じはあまりしない。

ずっとこんな感じなのだろうか?

でもまぁ、ずっとこんな感じでもいいような気もする。「夫婦」って究極のところ社会の名前であり立場の名前でしかなくて、言葉はどうしてもこの関係性の本質を突き詰めることはできないのだ。ずっとこんな感じでもいい。

だってずっとずっと、一緒にいるんだから、それには変わりがないのだから。

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初面接

類選考がすすんでいた会社の一次面接に行ってきた。

働きながらの転職活動って普通にしんどくて、日中の業務を終えてから夜に面接が執り行われるので業務中はソワソワして落ち着かないし、急な仕事が入って面接に間に合わなくなったらどうしようとかそんなことばかり考えてしまう。

無事定時に仕事を終えて、面接会場へ急ぐ。急ぎすぎて一時間前に到着する。近くのスタバでフラペチーノ(いちご)を飲む。

フラペチーノ(いちご)を飲みながら面接のイメトレをする。

なぜ御社に興味を持ったのか?

どうして転職をしようと思ったのか?

この二つの質問から派生される問いと答えを頭の中で何度も反芻する。

面接において回答はまず簡潔に、そしてところどころツッコミを入れてもらえるようにあえて穴を用意しておく。細かいところまで何を答えるか考えておかない。私はこれからスピーチをしに行くのではなく、対話しに行くのだから。

そうこうしているうちに時間になって、ネクタイを忘れずに締め、「御社」へ向かった。

 

面接はおよそ1時間、和気あいあいとした雰囲気だった。

うまく答えられたのかわからない。わからない時点でたぶんうまく答えられていない。

やれやれ。

でもひとまず、って感じ。転職活動してんな~って実感したし、目指す業界がどういった人物を求めているのか面接官の話から想像ができたし、イメージがより具体的なものに近付いたと思う。

うまくいけばいいけど、うまくいかなくてもしょうがない。あまり期待していない。

とりあえず面接を一つ終えたところで憑き物が落ちたので、これからは並行してほかの選考も進めたいところだ。

 

そらもう、ガンガンいきますよ。

ガンガン、ガンガン、いきますよ。

 

スピードをあげていかないと心が壊れる速度に追いつかない。

焼いちゃった

曜日ってほんとうにつらい。転職活動を始めてからさらにつらくなった。

ストレスで頭の奥がずっと痒いような不快感があるし、胃がキリキリ痛んでいる。口が臭い。性欲がない。

夕方ごろにふと、今夜はホットケーキを焼きたいな、と思った。

こんな雨の月曜のクソみたいな憂鬱はもう、夜中に焼くホットケーキでしか救えないのだ。

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焼いた。

23時ごろ、ダイエットとか健康とかそんなもんかなぐり捨てて、恋人と私のぶん4枚焼いた。

チョコレートソースも買ってきてやった。これをチュチュっとかけて溶けたバターの風味と共に口に運ぶ。小麦粉のお日様みたいな香り、バターの塩味、チョコの脳天を刺すような甘み、渾然一体となったホットケーキは快楽信号を脳髄へ流し込む。しびれる。

 

現実につらそうな私を見て恋人が言う。

「ほんとうにつらくて無理になっちゃったら、転職先が決まる前に仕事を辞めてもいいと思うよ。病気になってからじゃ遅いからね。無職の期間ができちゃってもいいと思うよ。だから無理しないでね」

ストレスで頭がおかしくなりそうになって夜中にいきなりホットケーキを焼いてたら、そりゃ心配もするだろう。

でも恋人がそうやって優しい言葉をかけてくれたり、私のホットケーキに付き合ってくれたり、話を聞いてくれるおかげでなんとか保てている。

負の状態にある人間が長くそばにいると相談役まで心を病んでしまうしそれなりに負担がかかるのであまり心配はさせたくないが、同時に心の支えになってくれていることに甘えて、感謝しかない。

 

朝起きたらかなり胃もたれしていてこれを口実に休めないだろうかと思ったけど、一度でも休んだらもう二度と仕事に行けない気がして怖いので、今日も仕事へ行く。

今週は面接がある。それを目指して気持ちを前向きにしたい。

 

くさいくさいくさいくさい

曜の昼さがり、窓を開けていたら「ぷ~ん」とニオイが漂ってきた。

肉か魚が腐るようなニオイだ。

おれがハエだったら好みだな、などと楽観して窓を閉めどうせ隣の世帯がベランダに生ごみでも放置しているのだろう迷惑だなカラスに荒らされてしまえなどと空(くう)を睨みつけた。

しかし、この部屋に入ったニオイがなかなか抜けない。

リセッシュ。そして換気扇(強)。

私はそのとき、昼下がりではあったけれども、正味、ビールを飲んでいてたいへん気分を良くしていたところに腐敗臭がしたことにとても寛大な気持ちにはなれず、生ごみを放置する隣の世帯に対してかなりの敵愾心を抱いた。

おれが気狂いだったら。

おれの頭のネジがトんでたら。

私がまともな人間であることに隣の世帯は安堵すべきだ。

事実そういう度し難い人間はそこらじゅうにいるわけだから集合住宅というものは恐ろしく、このような安アパートに暮らしているとどんな怪物的人間に遭遇するかわからないから、ベランダに生ごみを放置したり日がな一日アエギ声を出したり深夜にわたってエアロビをしたりせず、周囲の環境を慮ってみんなが平和に気持ちよく暮らせるようにある程度の妥協も含めて大人の生活をしなければならないものだ。

それなのに隣の人間はベランダに生ごみを放置して私の日曜日のほろ酔いを台無しにする。

人権侵害だ。ちくしょう。ちきしょう。田を返せっ!

それにしてもくさい。

かれこれ5分は強モードで換気扇を回しているのにニオイがとれない。リセッシュと混ざってかえってニオイは脅威を増し、部屋の中は「臓物のハーブ詰め~日中放置熟成~」みたいになっていた。そこでハッと気づく。

これ、外のニオイじゃないな。

うちの中から出てるニオイだ。

隣のベランダに生ごみなど放置されていない。常識外れの狂った住人など住んでいない。ここにあるのは部屋の中の謎の腐敗臭と、被害妄想に憑りつかれた憐れな酔っ払いだけだったのだ。

なんてことだ。

私は這いつくばってニオイがどこからきているのか探った。

クンクンクンクンクンクン。

ゴミ箱。

ちがう。

さっき捨てたミントガムのにおい。やたらと甘いにおいがする。ゴミ箱は違う。

クンクンクンクンクンクン。

バスタオル。

ちがう。

くさいにはくさいのだが、これとはまた違うニオイだ。私のバスタオルは雑巾のようなニオイがするので体を拭いていると悲しくなってくる。洗ってるのに。。。

クンクンクンクンクンクン。

外。

夏の匂いがしてきたね。

好きだよ。

クンクンクンクンクンクン。

探索すること数分、私はニオイの発生源に思い至り、証拠を確認するまでもなく天井を仰いで「ジーザス……」と神に捨てられた子のごとく絶望していた。

原因は、魚焼きグリルだ。

先週の木曜日にイワシの粕漬けをグリルで焼き、すっかり掃除し忘れていたのだ。

イワシの脂が水を張ったグリルの底に溜まり、粕と相まって発酵を促し、度し難いニオイを発生させていた。最近暑いでしょ。当然ねばねばしてる。液体。

最悪すぎる。イワシはめちゃくちゃ美味しかったのに。こんなことになるなんて。

でもこのままにしておくわけにもいかないし、こんなことで引っ越すわけにもいかないので、泣きながらグリルを外し、丹念に洗った。

このグリルを外すとき、張ってた水がいくらかこぼれて最悪だった。

ジーザス……」

吐き気を堪えながら汚物にまみれたキッチンを洗剤で磨く。胃袋をひっくり返されるようなニオイ。なんか、兵器、という言葉が頭をよぎる。

不幸中の幸いはビールを飲んでいたことくらいか。

こんなの酔わなきゃやってられないよ。

転職活動のきつさは転職活動でしか救われない(こともない)

職活動をしている。
ふつうに働きながら転職活動をするのはきついし、日々経るごとに仕事に行くのがつらくなっていってる。
心と体がバラバラになっていく感覚というのかな、すっかり心が離れているのに今の仕事へ行く無意味さみたいなものを考えてしまう。それは例えがたく屈辱的で、時間を侵害されているという面で人権を侵害されているような感覚すら覚える。
とは言え今の仕事にだって責任はあるのだから会社にはいかなければならないのは頭では理解しているし、ここでほっぽり投げるのはあかんこともわかっている。
ただなんていうか、そう、どんどん呼吸が苦しくなっていく。苦しくなって固形物が喉を通らないから日中は水分ばかり取っている。ヤバいので飴を舐めている。


そんな日々の中の励みの一つが転職活動だ。これは矛盾しているようだけど、転職活動のきつさは転職活動によって救われるのだ。
企業を調べているとき夢が膨らむ。職務経歴書を書いているとき自分は前に進んでいると自信を持てる。志望理由を考えるとき泣きたくなるほど切実な思いになる。
転職活動がいまの自分を支えているといっても過言ではない。
そんな状況の私を見かねて、同居する恋人は「夫の転職活動中に妻にしてほしいこと」をインターネットで調べたらしい。
二人にとって大切な時期なのに私がこんなことになってしまって甚だ申し訳なく情けなくまともに顔も拝めない思いだ。
「調べた結果、『そっとしておいてほしい』が一位だったけど、どうなの?」
「そっとしておいてほしいというか、応援してほしい。笑顔でいてほしい。それ以外はなにもいらないよ、君がいればそれでいい」
「それだけでいいんだね?言ったね?わたしはあなたのそばにいるだけで人生オールクリアなのね?」
「なんか話がすり替わってるな」
でも実際、君さえいてくれれば。

そう思う夜。

 

志望する企業に転職サイトから志望動機文を送ろうとしたとき、3000字くらい書いちゃてさすがに引かれるかな、と思ったけどまあいいかとフォームにコピペしたら、「2000字オーバーです」と表示されて送れなかった。

そこからめちゃくちゃ削ってなんとか1000字に収めた。1000字のほうがずっとよくなり、文章の要諦は簡潔さにこそあると実感した。それに、3000字も書いたことでその企業に対してどう思っているか、自分がどうしたいか明確になった気がする。つくづく私は書いて思考するタイプなのだと思った。

その企業から仕事中に書類選考通過のお知らせが来た。

「熱いメッセージありがとうございました」とテンプレメールの行間に書いてあったので、それなりに心は掴んだみたいだ。

まだ、ただの書類選考が通っただけだけど、久しぶりに嬉しくて、デスクの下でガッツポーズをし、それだけでは足りなかったのでトイレに行って個室で大きくガッツポーズをした。

よし。よし。よし。

ここから油断せず、確実に仕留めるつもりで、周到に進めたいと思う。