秋なんだし、秋らしいことをすべきなのではないか?なぜなら私たちは季節の言葉の中で生きている詩的な生き物なのだから。
そういうわけで、私と恋人は立川の昭和記念公園にコスモスを見に行くことにした。
ついでに新宿でプリンを食べようという話にもなった。新宿に極上のプリンを供するカフェエがあるという噂を確かめたくなったのだ。プリンは詩的な食べ物だ。甘美でほろ苦く、脆い。
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計画発表。御茶ノ水で集合し、茶水のカフェエでサンドイッチをかじり、その後新宿へ移動してプリンをかじろう、そして立川へ行きコスモスを観賞する。
なんて綿密なプランだろう。このプランを考えた私は仕事ができるに違いない。
そしてこの計画は、プリンの段階で破綻した。
プリンのカフェエは信じられないくらい混んでおり、並べども列が進まず、これは困ったと恋人と話し合い、たまたま近くにあった他のお洒落なカフェエへ行くことにしたのだが、そこでも結局30分ほど並び、極上のチーズケーキを食べて新宿を出たのが15時過ぎ、新宿から立川までは中央線快速で30分ほどあり、昭和記念公園に到着するのは16時過ぎだと思われた。
昭和記念公園は、17時に閉門する。
ぜんぜん時間がない。
どうしてこうなったのだろう?すべてはプリンの店の混雑をロクに調べもせずテキトーな計画を作って考えなしに行動していた人に責任がある。一体誰だろう。私にはわからない。
誤算はまだあった。
昭和記念公園は、行ったことがある人にはわかるだろうが、めちゃくちゃ広い。ちょっとした城下町くらいの大きさがある。どうしてこんなに広いのか意味が不明だが、正門からコスモス畑はおよそ徒歩50分くらい離れていたのだ。
昭和記念公園は17時に閉まる。私たちが正門についたのは16時過ぎである。
無理だ。
貸出の自転車があったが、16時半までに返せと言われた。無理に決まってるのに係のおやじはそういうことを言うのである。なんて悪党だろう。
園内を周回する、機関車を模したバスも「終了」していた。終わるな。
万事休すか。
万事休すでした。私たちは夕暮れの影の中で立ち尽くしていた。
そもそも、公園のどこでコスモス畑をやっているのか事前に調べておけばよかったのだ。そうすれば、立川駅からバスを使ってコスモス畑に近いところにある入口まで行けたのだ。時間を無駄にせずに済んだ。
つーかさ、こうなってしまったのは、プリンのせいなんだよ。しかも私たちはプリンを諦め、他のカフェエでも並ぶ羽目になった。なんなんだ。なにも今日プリンを食べなくても良かったじゃないか。でも、茶水からわざわざ移動して新宿で降りた以上、新宿で何かひとつやってやらないと気が済まなかった。
その結果、メインであったコスモスを見れず、私たちは昭和記念公園のベンチでシクシク泣くしかなかった。
シクシク、シクシク。
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これが最初のデートだったら、たぶんもうチャンスはなかっただろう。よかった、4年目で。
それに、今の恋人だから、こういうロクでもない1日でも終始二人で笑っていられたのだろう。私たちはシクシク笑った。
二人でいるだけで幸せなのだ、どこであろうとも。
呑気なものだ。平和な秋の一日だった。