蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

ふしぎな眼医者

 所の眼医者でインフルエンザの予防接種をしてきた。

 眼科でもできるのだ。

 家の近所に内科があるのでそこで受ければいいのだが、眼医者の予防接種は安いし、いつ行っても空いているので待ち時間がない。そういう点で言うと経済で良いのだけど、そういう点ではワクチンの信頼性に一抹の不安がある。

 

 その眼医者はほんとうにいつ行っても患者がいない。

 土曜の午後に行ってもいない。そこでコンタクトレンズを作るのだけど、待ったことがない。儲けは出ているのか?心配になるくらいだ。

 そもそも眼科じたいそこまで混むものではないのかもしれない。

 

 儲かってなさそうな割には設備も新しいし、常に看護師が3人はいる。

 医師以外は全員女性の看護師なのだけど、なかなかどうして美人だ。おばさん看護師もいるにはいるけど清潔感があって決して「おばちゃん」ではなく、しとやかな美しい女性である。

 若い女性もいて、彼女たちは可愛らしい。

 医師の趣味なのだろうか。

 どこで美人ばかり見つけてくるのだろうか。眼医者なだけあって目利きなのかもしれない。

 なんにせよ、美人は目に優しいから正解である。

 

 医師はおっさんなのだけど童顔で、グレーヘアのくせにおっさん感がほとんどない。それは彼の喋り方にも年かさを感じさせないものがあるからだ。

 「はぁ~い♡それじゃあここに顎を乗せてぇ♡お目めをぱち♡ぱち♡してくださいねぇ♡」

 「うん♡綺麗なお目めですね♡問題ありません♡♡」

 こういう喋りかたなのだ。

 語尾に♡のつく喋り方は巨乳のドスケベお姉さんだけではなかったのだ。うちの近所の眼医者も同じ喋り方をするのだ。

 今日だって、「それじゃあ、お肘のちょっと上らへんに♡お注射しますねぇ♡チクっとしますよ~♡」

 「いーち♡にーい♡さーん♡はいっ♡終わりましたぁ♡♡♡」

 この調子で注射をするのだ。

 巨乳のドスケベお姉さんではない。グレーヘアのおっさんである。

 この喋り方ドスケベお姉さんおっさん医師が美人看護師を雇っているのだなぁと思うと、なんだかモヤモヤする。

 

 院内はOASISの「Wonderwall」のオルゴールバージョンが流れていた。

 どうして眼医者でOASISのオルゴールを聴いているのだろう。

 ここは不思議な眼医者さんだ。

 

 受付の看護師はムッとした表情の美人だったが、会計を済ませて「ありがとうございました」と言うと、彼女は「お大事にどうぞ」とちょっと笑ってくれた。

 女の笑顔はぐっとくる。また行こうと思った。

 

 母が以前に話していた。

 スーパーでこの眼医者を見たらしい。

「なんか、髪の毛ぼさぼさで、Tシャツに半ズボン履いて、サンダルでね、お惣菜の前にぼーっと立ってる人がいたんだけど、よく見たら眼医者の先生だった。病院にいるときとはまるで違くて怖かった」

 なんなんだ、この眼医者は。おもしろい。

 

 この眼医者が長く続いてほしい。経営状態は良いのだろうか。この状況でもう10年くらいやっているから大丈夫なのだろうか。

 見通しがあってやっていけてるのだろう。眼医者なだけに。