会社を休んだ。有給休暇だ。
午前中に相続関係で都内に用事があり、午後から暇になったので、せっかくの平日休みだし、と心を切り替えて映画でも観ようと思った。映画とは、活動写真のことである。映画館と呼ばれる施設で観ることができる。大きな画面と大きな音を暗闇の中で見つめるなんとも不思議な営みである。さすがにそのくらいは知ってますね。
『IT』を観たかったのだけど、ちょうどいい時間にやっていなかったので、代わりに『ドクター・スリープ』を観ることにした。
このホラー映画は、あの『シャイニング』の続編である。
『シャイニング』はスティーブン・キング原作、キューブリック監督作品として、初上映から40年ちかく経とうとしているのに、現在でも多くの影響を与える珠玉のホラー映画だ。私も3〜4回観た。DVDで。
『シャイニング』は驚きに満ちているわけでもなく、めちゃくちゃ怖いわけでもない。冷たい湿気がまとわりつくような恐怖感である。
全世界に根強いファンがいる中で、今回「続編」ということで製作された『ドクター・スリープ』だけど、はたして大丈夫なのだろうか。
そんなことしたら炎上するのではないか?
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高校生の頃、文化祭で映画を作ることになり、私は脚本を担当した。
ホラー映画を撮ろう!ということだけ決まっていた。「じゃあ夏休み中に脚本作るよ!」と私は軽口を叩いた。
その夏、私は20本ちかくホラー映画を観た。
2日に一本のペースである。
DVDを借りてきて、知ってるタイトルから知らないタイトルまで観た。『シャイニング』もそのなかのひとつだった。
ホラー映画の勉強をしていたので、夏休みの宿題はまったく終わらなかったけど、なかなか好評の脚本を書くことができたのでよかった。この夏で私の数学の学習の遅れは決定的になりつつあったが。
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ホラー映画のCMは恐怖に怯える観客をカメラにおさめるなどして恐怖を煽るから、ホラーを観たことのない人は、かなり恐れている傾向にある。ホラーなんて観たら怖くて眠れなくなっちゃう!と。
だけど、いろんなところでいろんな人に言っているが、ホラー映画が怖いのは「観る前」だ。
実際観てみると、怖い、ということはあまりなくて、いちばん強く感じるのは「痛み」である。だけど、グロもやりすぎるとコメディになるのでバランスは難しい。『SAW』シリーズのファイナルや『ムカデ人間3』なんか良い例だ。ムカデ3に至っては最初からコメディとして作られているし。
などと言っている私だけど、今回観た『ドクター・スリープ』ちゃんと怖くて痛くて悲しくて良かったな。実は映画館でホラーを観るのは初めてで、音響がこんなにも恐怖を煽るのかと驚いた。ホラーは映画館で観るのがいちばんだ。
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『シャイニング』の続編ではあったが、『シャイニング』を強く踏襲しているわけではなく、シャイニング要素を時にはパロディアスに用いた、上質な二次創作みたいだった。
『シャイニング』よりも超能力バトル要素が多くて、本編に足りていなかった部分を補えていたと思う。
そして後半、あのホテルが出てくるのだが、そこのシーンは『シャイニング』のパロディとも思える演出が随所に施され(というかそもそも続編なのだから当たり前ではある)ており、ファンとしては嬉しかった。監督の『シャイニング』愛を感じられた。
私も『シャイニング』の二次創作をしたいと思った。
だけど『ドクター・スリープ』には原作がついており、その作者はスティーブン・キングというのだから驚きである。
二次創作じゃなかった。一次創作だった。
この作品、蛇足なような気もするし、これはこれとして面白いので、評価は観客それぞれの作品哲学によって割れるだろう。私は面白かったと思う。ちゃんと怖かったし。