例によって見切り発車でブログをしたためる次第、ご覚悟あそばされたい。
世間は忘年会シーズン。
私もその例に漏れず、今週と来週は忘年会があって、はやく帰らせてくれ、と思う一方で、行ったら行ったでなんとなく面白かったりするので、自分の心がわからない。私はいつも自分を見失っている。
そんなにこの一年を忘れたい人が多いのが日本の風土病のようなもので、私たちはなるべく過去に縛られず、どんな重大なミスも酒の力を借りて忘れることで笑い話にしてしまいたい生き物である。
私も今年はなにかと人生の変わった一年だったので(例:就職した。例2:父が死んでとんでもない相続争いに巻き込まれた。)、酒の力を借りて辛いことは忘れようと思う。
そう考えるのは人間だけではなくて、あの三猿たちもそうみたいだ。
顔色からして、なにか一物抱えてそうなこの三匹。
こいつらと忘年会なんてしたくないのだが、お呼ばれしたので行くっきゃない。場所は磯丸水産府中本町店である。
蟻迷路(以下:蟻)「やぁ、どうもどうも、お久しぶりです~。今日は呼んでいただきありがとうございます~!」
見ざる(以下:見)「ああ、おひさ~、ご無沙汰だったねずいぶん」
言わざる(以下:言)「……」
聞かざる(以下:聞く)「……(聞いてないので何も答えない)」
蟻「こちらこそなかなかご連絡の機会もなくてご無沙汰しておりました」
見「今日は遠いとこありがとうねぇ。あれ、ちょっと痩せた?っておれは見えてないんだけどもね(笑)」
蟻「あはは……」
言「……」
聞「?……」
見「まぁまぁ、さっそく飲みましょうかねぇ、はい!生の人」
私だけが手を挙げる。ほか三匹はおのおの両手で目を塞いだり口を塞いだり耳を塞いでいるので、ぴくりとも動かない。
見「生のひといないかな?」
蟻「あ、僕だけ……ですかね……(他は猿だし)」
見「じゃあ私も生で!ちょっとお姉さ~ん!生ふたつと水ふたつ!」
蟻「あれ、お二人はいいんですか?」
見「いいのいいの、アルコール駄目でね」
蟻(それにしたって、ソフドリくらい頼めばいいのに……)
と、このような有様になる事は必至。
見猿以外とのコミュニケーションはまず不可能である。
言猿は必死に目でもって会話に入ろうとするが、仰々として恐ろしい。聞猿は会話が一切聞こえていないので話すにも話せない状態。こいつはなんなら一匹で「言わざる」と「聞かざる」の役割を果たしている。
そして、面倒くさそうなキャラクターの見猿である。私は一人でこの猿を相手にしなければならない。
見「なに食べるん?つーか、メニューなにあんのw 暗くて見えんwww両手で塞いじゃってるからwwwww」
蟻「あはは……」
見「魚と貝食べたいねぇって当たり前か!wいやでも蟹はおれたち苦手なんだよな」
蟻「……さるかに合戦……ですか」
見「よっ、ご名答。あいつとはいまだに仲悪いんよ、っておれ何歳かって話wネネ、何歳に見える?おれは見えないけんどwwwwwww」
だりぃ~~~~~~~~~~~~~
なんか書いてたら無意識のうちにダルい先輩になってきた。
私は愛想笑いをしながらチビチビ麦酒を啜る。顔は笑ってなくても見猿さんには見えてないから大丈夫だ。
聞猿と見猿は手を使わず、テーブルのグラスに顔を近づけてじゅるるる啜る。言猿はもちろんなにも口にできないので、ただ見ている。
やがて見猿は酩酊の調子。
見「いやぁ、三匹でコンビ組んでかなり長いけど、今年ほど苦労した年はないね。いや、あったかな?いや、ないね。うん、ないよ。まったくそれにしても一年てのはぁ早いもんだね、年々早くなる。やっと書類に2019年て書くのに慣れたとこなのにサァ、もう2020ですよ。オリンピックですよ。五輪ぴっくですよ。ゆりこ~!wバンクシーらしき猿の絵でも飾ってもらおうか、おれたちなかなか芸術品だからね。いま改修工事やってっから。東照宮。マイホーム。アワーホーム。ハッピーアワー。ハッピー泡。ビールねこれ。見えねぇから味がしねぇw味しな猿ww語呂が悪いな。おい、言猿、ちょっと死んでみてよ」
などと、酔っぱらってろくでもないことしか言わなくなった見猿。
こういう輩については見ないほうがいいし、話に耳を傾けない方がいい。もちろん、言うべきことなどなく、また、こうなってしまうから酔っぱらったら口は慎んだ方が良い。
そういう、教訓話のブログ。