高校生の頃から使っていたウォークマンが発掘された。
かなり旧式のウォークマンで、と書こうと思ったけど、今はもはやウォークマン自体歴史的なものになりつつあるのかもしれない。
あるときから(大学2年生くらいから)、私は歩きながら音楽を聴くことをやめた。
音楽は部屋でひとり、時間と有閑に浸りながら聴くものだと考えを改めたからだ。それはひとえに、レコードを聴くようになった影響がある。
それ以来ウォークマンで音楽を聴くことはやめ、外を歩くときも電車に乗るときも、外の音に耳を傾けるようになった。音楽で耳を塞いでいると聞こえなかった世界が耳に入ってくるのが妙に新鮮だった。
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在宅ワークになり、仕事が鬼忙しくなって、部屋のデスクに平日齧りつくように座っていると、だんだん足の血の巡りが悪くなり、定時を過ぎると心臓がばくばくする。軽いエコノミー症候群になっているのだろう。むくみもひどく、足の指が徳利になってしまいそうだ。
そこで、仕事が終わったら、30分くらい近所を歩くようになった。
夜の住宅街をやたらに歩いていると思考が活発化してなにか有意義な妄想でもできたらいいのだけども、しかし残念ながら憂鬱な仕事のことばかり考えてしまい気分が晴れなかった。
こういうときこそ音楽が必要だと思った。
そこで昔使っていたウォークマンを発掘したのだ。
3年くらい電源を入れてなかったからもうダメかもしれない。イチかバチか充電してみたら、なんと、電源が入った。充電池は生きていた。
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入っている曲を、アーティストを、アルバムを、眺める。
いい趣味している。
当然だけど私が好きな音楽ばかりそこに詰まっていた。10代の少年がそこにはいた。
andymori、スピッツ、bloodthirsty butchers、NUMBER GIRL、森田童子、Beatles、RHCP、Oasis、ジッタリンジン、くるり、ラブリーサマーちゃん、QQIQ、かぐや姫、電気グルーヴ、フラワートラベリン・バンド、YMO、神聖かまってちゃん、はっぴいえんど、sigur ros、ズットズレテルズ、アジアンカンフージェネレーション、サカナクション、Radiohead、Led Zeppelin、ドレスコーズ、NIRVANA、ピロウズ、カーペンターズ、相対性理論、チャットモンチー、たま、大瀧詠一、Queen、Weezer、東京事変、MUSE、雅楽やバッハ、モーツァルトまである。
好きな音楽には心浄化される。
少なくとも、余計なことは考えずに、音楽に浸れる。
歩きながらでもそれは変わらなかった。
音楽の聴き方は変わっても、やっぱり音楽って素晴らしい。昔の自分はいいもの聴いてたな。馴れって怖くて、いいものでも馴れてしまうと新鮮さを欠いてしまう。すべての物事がそうだ。
感動を失う本当に恐ろしい敵とは自分の心の曇りに他ならない。
久々に再生された十代の時間が、荒んだ心を癒してくれた。