蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

好きな時間

  1日の中でどの時間がいちばん好きかを考えるよりも先に、どの時間が嫌いかの方が出てくる時点で、私は悲しい大人になってしまったのかもしれない。

 

    朝。

    朝は嫌いだ。

    平日の朝は最悪と言っていい。

    仕事があるからだ。

    仕事がなければ朝は好きなのだが、仕事があるだけで、眠りから覚めた瞬間に「くそったれ」と呟き、「またか……」と繰り返される絶望に口の端が血で滲む。

    口を開けっぱなしで寝るので、朝は唇がかぴかぴに乾いているのだ。

 

    仕事のある日の朝は、気分が悪いというか物理的に体調が悪くて、咳き込んだひょうしに軽く嘔吐しそうになる。

    なんだか熱っぽいし、お腹は痛いし、肩は凝ってるし、おじさんになっていくというのは最悪のことだ。

    駅まで走ろうものなら、車両連結スペースで嘔吐は必至である。

    学生時代、運動をしておくんだった。走り込みをしておくんだった。教室の隅でクダ巻いて人類を滅亡させることばかり考えてたから今自分が滅亡しかけてるんだ。

 

    私の会社のチームはシフト制だ。

    早番と中番と遅番があり、遅番だと出勤は12時になる。

    12時出勤ですか、いいご身分ですね、なんて言われることも多いけど、実はこの12時出勤、私は嫌いだ。

    なぜなら、12時まで「出勤前の状態」が続くから。

 下手に早起きをしようものなら12時までソワソワし続けなければならず、なにか障害が発生してやいないか、昨日残した仕事が大変なことになってやしないか、気が気じゃない。

 だから前日はあえて夜更かしをして11時くらいまで眠るようにする。

 遅番は悲しい。

 12時は私以外の人はみんな既に一日の半分を終えている。私だけが今から働く。

 そのむなしさ。

 夜更かしをすると、長い時間眠っても、体内時計が狂うのだろうか、なんだか体が膨らんでいくような茫漠とした気分になり、ぼーっとしてしまう。

 これでネットワーク障害でも起きていたら最悪だ。

 水槽の魚が生きたまま熱い油の中に入れられたとき、きっとこんな気分なのだろう。

 

 なんにせよ朝は嫌いだ。

 長い一日が、はじまってしまう。

 

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 言うまでもなく、好きな時間は仕事の終わる時間だ。