蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

家具が揃えば

  具が揃い始めている。

 引っ越しをして4日が経過し、事前に購入した家具や家電が配達されたり、足りないものを近所のホームセンターへ買い足しに出かけていたら4連休は終わった。

 やることの多い忙しい休日だったが、目に見えて家が充実していくことがやりがいに繋がった。成果物が見えるとはいいものだ。

 

 ひととおり調理器具も揃えたのだが、まだ料理はしていない。

 出来合いのものを食べるか、せいぜいパンをレンジで温めるくらいしかできていない。

 というのも、冷蔵庫が無いので食品の保存ができないのだ。

 一日に7回は「冷蔵庫さえあれば……」と木綿のハンカチを噛み悔し涙を流す。

 江戸時代には冷蔵庫で保存なんてできなかったんだ、江戸時代は大変だなぁとおもうものだ。そりゃあ保存食が生まれるわけだ。だが今は令和である。江戸時代は終わったんだ。

 在宅ワークでは冷凍食品のパスタやチャーハンが大活躍するので、スーパーで買おうとしたところ恋人に止められた。「買ってどうするの?」

「食べるんだよ」

「今夜?」

「いや、在宅のときに」

「冷蔵庫ないじゃん」

「あ、そっか。失敬失敬。ははは。滑稽だね。冷蔵庫が無いってのは」

 ちょうどハンカチを切らしていたので、半袖の袖で涙を拭った。

 

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 実家から使っていない炊飯器を持ってくるはずだったのだが、その炊飯器をあまりにも使っていなかったため、実家に忘れてきてしまった。

 今更炊飯器だけ取りに行くというのもばかばかしいので、新品を買った。あまり高価なものを買ってもしょうがない気がしたので、お米を炊ける炊飯器を買った。機能が少ないのでパンを焼いたりYouTubeが見れる代物ではない。WiFiルーターにもならない。最低限お米を炊けるだけだ。

 だが、炊飯器が家にあるというだけでなんだか「生活が始まった」かんじがして嬉しく開封した。

 これで米を炊くのだ。私と恋人の主食を司る大切な一員なのだ。

 なに、機能が少なくても恥じることはない。お前は米さえ炊ければ十全なのだよ。と発泡スチロールから出してやると、炊飯器、粋にも時刻を表示してやがる。

 ははは!

 こいつ、炊飯だけじゃなくて時計にもなるのか!

 その時計はタイマー機能として使うものだが、我が家には時計が無かったのでちょうどよかった。

 

 このようにひとつひとつの喜びを楽しみながら、新生活をおくっています。

 

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 翌朝見てみると、炊飯器の時計は実際の時間より3分ほどズレていた。