いつ食べても太るんだから、いま食べよう。
そう言うと蟻迷路氏は「ブタメン」に湯を注いだ。その湯はもともと、お茶を淹れるために沸かした湯だった。
1個50円のブタメンを、16時、仕事の合間に、啜り貪った。これが在宅ワークの強みである。
飢えてる。恥ずかしいくらいの勢いで私は駄菓子のラーメンを啜った。
なぜブタメンの豚さんは目が回っているのだろう。そんなことを思い啜った。
いくら考えてもわからない。なぜ目が回っているのか。目が回っているのではなく、単に「こういう目」なのだろうか。昔のアニメはメガネキャラのメガネが外れると「3」の目だったりしたが、それと同じことだろうか。……
まぁどうだっていいナ。
麺を啜る。
皆さんもぜひ食べてみてほしいのだが、ブタメンは量が丁度よく小腹を満たしてくれて、ジャンクな塩味がきついがその味の濃さが量の少なさをカバーし満足感を補完する。
具に関しては皆無。麺と汁、少量のゴマ。だけど、それでいい。それがいい。
ブタメンはすべてにおいて丁度良い。そんなことをちょっと考えているうちに食べ終えてしまう、手のひらサイズの至福。作るより食べる方がはやいくらいだ。
味の濃さ、駄菓子と言えども「ラーメン」を食べているという事実、それだけでブタメンの罪の深さは悪魔的と言える。
丁度良く小腹を満たせてお手軽に美味しくなれるブタメンは悪いやつだ。
確実に太る。
目が回っているブタは消費者へ向けた、太ることへの警告なのだろうか?知らぬ間に肥えてしまう私たちを暗に示しているのだろうか?
「いつ食べても太るんだから、いま食べよう」
この言葉が出てきてしまうくらい、今の私の食欲は爆発している。
引っ越して、恋人と暮らし始めてからずっとこの調子だ。
食べても食べても「お腹いっぱいで動けない」状態にはならず、まだまだいけそうだな、と妙な自信があるほどだ。
そのくせすぐにお腹が空くので間食をしてしまうし、毎食しっかり食べてしまう。
なにを食べても美味しいし、食べることは幸せなことなんだとあらためて実感する。好きな人と食事をするって幸せなことなんだ。
そのぶん運動しているかと言われると、堂々と答えられるほどの運動はしていない。確実に引っ越し前よりかは身体を動かしてはいるが。
このままでは確実に、確実に、太るだろう。
幸せ太りってこういうことなのか。
恋人という宇宙一魅力的な存在と共に過ごすことで、私の中の男性ホルモン的なものが過剰に分泌され、雄々しくなるというか、筋肉的な代謝が良くなって、食欲が増進しているのだろうか。
恋人を守るために、肉体が強くなることを欲しているのだろうか。
私の場合、体重が身長に比べてあまりにも軽く「痩せすぎ」の部類になるので多少肉がついて筋肉が増えるのはいいことなのだが、ぶくぶく肥っていくのはいただけない。
本当にブタメンになってしまうので、気をつけよう。
食べれるときに食べるのもいいけど、欲望に任せて行動するのは文明的とは言えない。
気をつけよう気をつけよう。
こういうことを食べる前に言えたらなお偉いのだが。