嫌な夢を見た。
夏休みが終わってしまい、仕事がはじまって、私は大きなミスをする。
そんな夢だった。
目が覚めた私は、ああよかった、夢だった、もうひと眠りするかと一安心したが、それは一時の安堵でしかなかった。
夢じゃない。夏休みは、昨日で終わったのだ。
終わった、のだ。
頭が重かった。寝不足である。
昨晩は夏休みが終わる事実を受け入れられず、ワインをがぶ飲みしたのちウィスキーの水割りをあおって昆布をしゃぶるなどして、苦痛から逃れるために前後不覚になろうとしたのだが結局酔いきれずに夜更かしをし、悪い酒は精神をも蝕んでより一層憂鬱を助長させただけであった。
「赦してくれ」
無意識にそう呟いた。誰が赦してくれるというのだろう。
気付かずに出た言葉の無意味さに呆れてため息のような笑いを漏らし、胸がぐぐぐと苦しくなって、枕を抱きしめた。いっそ泣けたら。カーテンの下から漏れる朝日が眩しすぎるのに、部屋は暗すぎる。
長期休み、と言っても10日間の盆休み。
去年の盆休みも、正月休みも、ゴールデンウィークも、最後の日にはもだえ苦しんで泣いたりしていたけど、この苦しみ──休みが終わるという苦しみ──はいつまで続くのだろう。まさか、死ぬまで?うそだろ。定年まででも長すぎる。
おれは、小説家になる。そんで会社を辞めて、毎日うだうだして時々文章を書いて、本を読んで暮らすのだ。
苦しくなるといつもそう考える。この苦しみは一時のものさ。と言い聞かせる。
休みの最終日の昨日は、佐川急便に組み立て家具を配送される予定だったので、一日中家にいた。
午前中に配送されて午後の早い時間には組み立て終り、夕方に近所のスーパーに行っていろいろと買いたいものがあったのだが、実際に配送されたのは18時前。それまで私は家から出られずにずっと部屋に縛られていた。
届けられた家具(本棚)の組み立てが一人では難しく、組み立てをしつつ夕飯の準備をし、恋人が帰宅したので一旦作業をやめて夕食を食べ、本の収納までのすべての作業が終わったのは22時過ぎだった。
一日の時間の使い方がかなり無駄になった。
佐川、許さん。そうおもった。
だけどずっと欲しかった本棚が届いたこと、なんとか一人で組み立てたことは嬉しく、収納されてすっぽり収まった本たちも安堵したようだった。ようやく本が家の一部になった気がする。
しかし、本を収納してみると、意外と本が少ないのだな、と口にしたら、恋人が閉口した。(別の本棚もあるのだ)
少ないとはいえ、これ以上本を買っても収納する棚がないしけっこうギリギリだったので、これからどうしようか考えどころ。
とは言え、本を買わないという選択肢はない、と恋人に言おうとしたが、閉口したままこちらを睨みつけていたので、やめた。