蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

仮眠と逃避

人は、帰宅して食事をし、片付けを私と一緒にした後、テレビやYouTubeを見ながらアイスやチョコレートを齧って、しばらくするとリビングに設置された私のベッドにもぐりこみ、そのまま寝てしまう。

だいたい眠りはじめるのは21時ごろからで、彼女が寝ている間に私はブログを書いたり風呂に入ったりそれ以外のことをしている。

「お風呂入りな」と促すのだが、結局23時頃になるまで彼女は起きない。

23時過ぎになると寝ていたことが嘘だったかのようにはっきり起き上がり、てきぱきと準備をして風呂に入る。

「あなたは髪の毛が短いからシャワーもそんなに億劫じゃないでしょうよ」

恋人の場合、髪の毛が長いからまず洗うのに時間がかかるし、乾かすのにも時間がかかり、ケアにも時間をかける。

乾かすのだけでもおよそ15分以上はかかっているので、これを毎晩となるとたしかに面倒くさい。私のように30秒で終わるドライヤーですら面倒くさいのに。

こういった面倒くさいことから逃避するために彼女は私のベッドで寝息を立てるのだ。

「いやだいやだ面倒くさい」と言ってもがいているうちに眠ってしまう。

 

いまこれを書いているときも、恋人はシャワーから逃避して、私のベッドで健やかに眠っている。

一日働いてよっぽど疲れているのだろう。私は在宅勤務だからそこまで疲れていないけど、恋人は1時間弱かけて職場へ通っているのだ。私も職場へ出勤した日は疲れてしまう。

 

それにしても、健やかに眠っている彼女は、愛しい。

湖のように静かな寝息をたて、掛け布団をわずかに上下させ、すこやかに、平和な眠りに浮かんでいる。寝ているのが私のベッドでよかったとおもう。

 

だけど、そろそろ起こしてやらなければならない。

もう23時を過ぎてしまった。

もうちょっとだけ彼女の寝息を聞いていたい。

なぜなら寝起きの恋人は獰猛な猫のように不機嫌だから。