蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

「幸福」のために神楽を舞う

ンスが苦手で、踊っていると「神楽」と恋人に言われるほどの腕前である。

「神楽」を舞えば98%恋人を笑わせることができるので、逆にこれはもう、ダンスが得意と言ってもいいかもしれない。

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YOASOBIの「夜に駆ける」に合わせて、半笑いを浮かべ背筋を伸ばしたまま膝を中途に軽く折って屈伸を繰り返す「直立の舞」をしていたら、それを見た恋人は、全身の力が抜け、その場に倒れ込み、全身を掻き毟るように笑い転げてしまった。

なにがそんなに可笑しいのか。

私は真面目に踊っているのだ。

「直立の舞」をYOASOBIに捧げているのだ。

それをこうも笑うとは、罰当たりな。

恋人はようやく立ち上がったが、また踊る私を見て再度平伏した。

我が「神楽」でこうも笑ってくれるなら幸せだよ、まったく。

 

ダンスは昔から苦手だった。

リズム感が無いので、なんていうか体でリズムを感じることができず、たとえばそれはLIVEにも言えて、音楽に合わせて身体が揺れていたはずなのに、いつの間にか合わなくなり気持ちの悪いノリ方になってしまう。ノることができないのだ。

感覚的にリズムを掴めない、リズム音痴なのだろう。

手拍子すら苦手で、気を抜くと次第に私だけ壊れたメトロノームのようにリズムが狂い、裏拍を叩いていたりする。音楽をやるうえで致命的である。音楽の要素は、メロディ・リズム・ハーモニーだから。ついでに協調性も無いのでハーモニーにも欠く。

リズム感だけでなく、運動神経も鈍めなので、動きにとにかくキレがなく、ある日には酔っぱらった猫が頭巾をかぶって右往左往しているようになってしまい、またある日にはエジプトの絵画みたいにカチコチの動きになってしまう。

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ともかくそれはダンスと呼べる代物ではなく、言うなれば「神楽」なのだ。

 

笑われると、中学の体育のダンスの授業でちょっとまわりの足を引っ張っちゃったことを思い出して胸が痛くなる。

また、そのときグループの女子が「ダンスで一番大事なのは笑顔だよ!」と言ってくれたことを思い出す。

笑顔であれば、なんか下手でも楽しい気分になってきて、上手とか下手とか、なんかそもそも競うもんではなく楽しむもんなんだな、とおもえてくるのだ。楽しむことがダンスの肝だ。

 

笑い転げる恋人を足元に見ながら、まぁ、それでいいのだ、と幸せにおもえてくるので、それでいいのだろう。