蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

仕事納め、突入、有限

日は仕事納めだった。

幸い在宅ワークにできたので、家でのんびりしつつ、定時を待った。

 

最終営業日なんて何も起こらない。例年、最終営業日は半日オフィスで飲み会をしているのだが、今年はそういうこともやらないので、ただただ暇な一日を過ごした。

恋人は前日に仕事を終えていて、一日家にいて私の仕事ぶりを観察したり、ソファで眠ったりしていた。

年末の緩やかな時間が流れていた。

メールも一時間に1通しか来ないし、電話も鳴らない。社内チャットも、余計な波風を立てないように今日ばかりは静まり返って、誰もいないみたいだった。

やるべき仕事も特になく、いや、探せばあったのだけど、片付けておけば来年なにかの役に立ったり名を上げることに一役買ったかもしれない仕事はあったのだけど、もう最終営業日ですよ、なんもやりたくないですよ、と思ってしまって、ああそれで最後、甘んじた。

なんもせんかった。

アプリで漫画を読み、YouTubeを鑑賞し、マリオ64をやり、小説を読んでいたら定時になった。

社内チャットで簡単に挨拶を済ませ、すぐさまログアウトする。

一瞬でパソコンを片付け、目に見えないところに安置する。これで来年までは仕事のことを忘れていられる。

とりあえず裸になり、部屋をウロウロして、あられもなく屈伸をして振り子運動を確認し、仕事納めの喜びをかみしめた。喜びをかみしめるには、とりあえず裸になるにかぎる。

自由だ。

 

ふと、自分がもうすぐ3年目になることに気付く。

今年はコロナ禍もあり、あまり成長できなかった気がする。いや、こういう状況でも、成長はできたはずだが、いまいち身が乗らなかったというか、なんかやっぱりやる気が無くて、どうなんだろう、というモヤモヤした気持ちを募らせた一年だった。

もし来年、3年目になってもどうにもならなかったら、転職しようかとちょっと考えてる。

 

などと考える時間も惜しく、冬休みは刻一刻と時間を失いつつあった。

時間は限られている。労働時間は無限にあるのに休息は有限なのだ。

こうしちゃいられない。

私は服を着て、髪を整え、コンタクトレンズを装着し、出かける準備をした。

仕事終わりと、私のちょっと遅れた誕生日を祝し、恋人とすこし良いお店へ行ってディナーを楽しむのだ。

恋人は夕方から出かけて整髪へ行った。髪の毛を染めるらしい。店の最寄り駅で待ち合わせをすることになっている。

一緒に暮らし始めてからこうした待ち合わせをする機会も減ってしまったので、久しぶりの「待ち合わせ」がなんだか非日常感あって楽しい。

足取りは軽く、空気はすこし暖かく、月は大きくて美しい。

有限であればこそ無限の可能性を夢見るようにできている私たちは、愚かなのではなく、愛しい存在だ。