蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

あなたの好きな本を教えないで

taknal というアプリを入れてみた。

 

taknal

taknal

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apps.apple.com

 

SNSの一種で、アプリ利用者のオススメの本をすれちがい通信で共有できるのだ。

本を読みたいけど何を読みたいのかわからない、次に読む本を探しているけどどれが面白いのかわからない、そういう状況は読書家ならあるだろう。

そういった悩みがこのアプリで一挙に解決できるのだ。

 

本屋に行って、結局どれを読むか決めきれずにわけのわからない哲学を買って本棚の栄養分にしてしまうことがたまにある。

迷った末、あまり興味をそそられないけど普段読まないライトな小説でも読むかと買ってみたものの、文体を受け入れられず、数ページで破棄してしまうこともある。

迷いすぎて本屋を5周くらいして急に腹痛を訴え、トイレに篭ることもある。

すべて、買う本が決まっていないから起こる悲しみである。

 

あらかじめ読みたい本、興味のある本を決めていればこういった「時間の無駄」「金の無駄」「水道の無駄」の3大無駄を未然に防げるではないか。これでこそ経済だ。丁寧な生活だ。IT革命だ。

私は早速このアプリをインストールした。

 

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アプリをインストールし、位置情報を登録してすぐ、同じ地域に住むアプリ利用者のオススメ本がタイムラインに表示された。どうやらすれ違い通信だけではなく、位置情報から算出された地域の利用者からも情報を吸い取るらしい。

自己啓発本、小説、ライトノベル、評論などなど、多様なジャンルの誰かのオススメが飛び込んでくる。

100文字以内で書ける感想は簡潔でノイズが少なく軽くていい。感想なんて「面白かった」「泣けた」くらいの簡潔さでいいのだ。あと「どういうときに読み返したくなるか」を知れるとなお良い。

今は利用者が少ないからいいけど、これで増えてしまって一日にオススメの本が100件も表示されるようになったら本屋をウロウロするのと変わらないのでは。という危惧もあるけれど、読書人口から言って利用者が爆増することもないだろう。

 

ひとのオススメを見ていて、しかしながら、ぜんぜんピンとこなかった。

たぶん心のどこかで「どうして顔も知らないお前にオススメされなきゃならないんだ」というヒネクレタ私が睨みを効かせて、斜に構えて「フン」とか言ってるからだろう。

オススメを受容する心、が無いのだ。

 

狭く、浅く、暗い心。

可哀相な人。

愛されもせず、愛す喜びもない人。

 

だいたい、SNSではなく実際生活で人にオススメされた本も読む気が起きない。オススメされたりプレゼントされた本は、おおよそ3年後に読みはじめる。

読む本は私が決める。それが出会いだ。私は出会いを大切にしたい。

読書をすると頭が更新される気がして、自分の情緒や思想も変化する。

その変化を誰かのオススメによって無抵抗に受容することはできない。

ヒネクレタ私がそう睨みつけるから、本をオススメすることも、オススメされることもままならないのだ。

人のオススメを蔑ろにして我が道だけが真実と思い込み狭い視野で生きている人は将来的にヤバイ老人になって銀行で女性行員に暴言を吐いたり杖を振り回すようになってしまうらしい。死んだ方がマシと言える。

 

 

 

 

結局、アプリを使うことはなくなってしまった。

ああ、と思う。

いいよ、私は本屋をウロウロしまくった挙句わけのわからない本で散財してその場で漏らすから。そういう人生でいいよ。

ヤバイ老人になってやるよ。

ああ、ああ。