各ミュージシャンの作品で一番最初に買ったアルバムはなんだろう。
Beatlesは『Abbey Road』、スピッツは『ハチミツ』、andymoriは『ファンファーレと熱狂』、bloodthirsty butchersは『kocorono』、東京事変は『スポーツ』、電気グルーヴは『UFO』、Sigur rosは『Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust』……。
くるりは『TEAM ROCK』だった。
どうして『TEAM ROCK』だったのか今となっては忘れてしまった。
「くるり、聴いてみるか」ってノリでたまたま手に取ったのがコレだったのかもしれないし、「ばらの花」を知っていたから選んだのかもしれないし、真っ青なアルバムジャケットに惹かれて、ここに導かれたのかもしれない。
とにかく出会いは『TEAM ROCK』だった。
高校生の頃、ウォークマンに入れて、行きも帰りもずっとこのアルバムを聴いていた。
久しぶりに聴いてみたら、高校生の頃に通っていた道とか、途中の自販機で売ってたアセロラドリンクの味とか、帰りの電車の窓から注ぐ日差しとか、近所のマクドナルドの二階席とか、教科書の新しいページを開いた時のツンとくるニオイとか、夏の図書館の涼しさとか、よく聴いてた当時の景色を思い出した。
辛いことも多かったあの頃だけど、思い出してみるとなんだか温かい気がする。なぜだろうな。
「ばらの花」とか「ワンダーフォーゲル」とか有名な曲も好きだけど、私は特に「カレーの歌」が好きだった。
『アイアムアヒーロー』という漫画で(ここからちょっとネタバレになるので注意)、登場人物の一人「比呂美」がゾンビになって暴れるシーンがある。
ゾンビとなって暴れ、仲間を襲う他のゾンビたちを蹴散らすが、獰猛ゆえに手が付けられなくなってしまう。内臓を蹴散らし、腕を捥ぎ、投げ飛ばす。殺意が昂る。
このままでは見境なく破壊衝動に身を委ねてしまうだろう比呂美に主人公は静かに近づいて、さっと比呂美の耳にイヤホンを付ける。
そこで「カレーの歌」を再生するのだ。
とても小さな窓のそばで ぼくらは凍える 笑顔のままで
すると比呂美の瞳の奥で彼女の日常の風景がよみがえる。踏切とか近所のお地蔵様とか街路樹のある日常の風景が瞳の奥で、記憶の底から再生される。
そうして彼女は暴走を止め、眠るように落ち着きを取り戻し、心地よい微笑みを浮かべるのだった。
そのシーンが好きだ。彼女は音楽で心を取り戻す。
ほんとうに幸せだったのかわからないし、思い出してみると結構辛いこともあったあの頃だけど、瞳の底に染みついているあの頃の日常の風景は思い出すとなぜだか温かい。
「とても小さな窓のそばでぼくらは凍える笑顔のままで」このフレーズは、「ぼくら」は「凍えている」のになぜ温かい感じがするのだろう。
この情緒は「思い出してみればよかったかもしれないあの頃」の温もりと似ている。
カバーだけどとても素敵だったので共有するね。
お昼休みにでも聴いてみてよ。