蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

スクルタス(古代スポーツ)

クルタ(英:Skultas)は屋外で行われる格闘技の一種。

全世界の競技人口は減少の一方だが、最盛期の18世紀にはヨーロッパ大会やインド大会が開催されていた。カスピ海を源流とする新スポーツの一種とされる。

 

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目次

 

 

概要

クルタスの大きな特徴はなによりも「勝敗を決しない格闘技」という点である。選手は土俵のような「ステージ」に裸足で上り、一対一で競技を開始する。武器の使用が認められた*1例もあるが現在では素手蹴り、組手のみの肉弾戦が公式ルールである。

勝敗を決しないという稀有な特徴により、誰でも参加可能で、男女差のハンデ、身体的なハンデは設けられない。また、八百長や身分の違いによる忖度も生じえず、すべての人間が「ステージ」上では平等である。

こうした競技の特徴を踏まえてスクルタスは「古代から来た現代スポーツ」とも称される。

 

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歴史

クルタスの源流には諸説あるが、最も支持されているのはカスピ海西岸地方、現在のジョージアアゼルバイジャンイランの付近で自然発生的に始まったとするものだ。

スクルトには古代カス語で「美徳」という意味があり、接尾語の-asが付いて「徳のある人」に変化した。その言語論的な意味と競技内容が合致することから、カス語を源流とするカスピ海西岸および南西部が発生地であると推測されている。しかし、発生の起源は明確にされていない。

どこかの誰かが明確な目的を持って作ったものではなく、人々の自然と調和する暮らしの中で培われたの観念が、祭事余暇の時間にそれらを「魅せあう」ものとしてひとつの「遊び」に定着したのではないかと考えられている。後年的なイスラームキリスト教と結びつかず、土着信仰アミニズムに端を発すると考えられている。

クルタスと名付けられたその遊戯は、数々の戦争やカスピ海交易を通じて、西欧地中海沿岸北アフリカ中央アジアシルクロードに乗って中国大陸に伝播し、極東の日本にもたどり着いた。日本では相撲の源流になったとする説もある[?要出典]

 「美徳」がいかにして格闘技となり現在のかたちになったのか、文献資料が極端に少なく、また研究の始まった現代では競技人口もわずかであるばかりか、伝承していた家元も消滅しているため不明である。

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ルール

性別年齢人種を問わない選手が一対一で「ステージ」に上がる。この際、衣服の着用は自由だが、自分が最も誇りを持てる状態であることが条件となる。たとえば格好が粗末な麻布を巻いたものだとしても、それが最も自己矜持を示すものであるならば「ステージ」に上がることを許される。

「ステージ」の広さは定められていない。

審判は一人。ゲームスタートの号令と反則があった場合に止める役割を担う。先述のように勝敗を決しないので、論理的にはゲーム終了の判断は審判の一存ではつかない。あくまで選手同士の合意の上で、その旨を審判に伝え、審判がそれを受理することでゲームが終了する。

格闘技である性質上、怪我や損傷の恐れがある。ルール上反則にあたるのは「致命傷を目的とした攻撃手段とそれに類する卑劣な行為」である。

武器は装飾品の一部であるという新解釈により一時期使用を認められていたものの、けが人の続出と「詭弁説」により現在では廃止されている。*2

なお、記録上、競技中の死者は確認されていない。

 

誠意を持った「格闘」の末、双方納得の上で試合は終了する。そのタイミングはさまざまで、ひと振りの拳の触れ合いで終了することもあれば、三日三晩不眠不休でも終わらない場合がある。*3

どのようにして試合が終わるのかは、選手の格闘を通したコミュニケーションでしか理解しえない。選手は競技が終わると互いを褒め合うことが儀礼であり、それが試合終了のアピールでもある。観客は結果なき結果に対して頷き、同様に納得するほかない。

 

このスポーツに勝敗が無いのは、美も徳も競うものではなく、ただ胸の内にあるものであるからだ。

クルタスはその意味で自己を発散し理解し合うためのコミュニケーションの一種でもあるとされる。

 

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(アゼルバイジャンの草原風景)

 

保護活動

競技人口の減少は「勝敗を決しない」というスポーツとしては異例の特徴が招いた悲劇である。勝敗が無いことで向上心闘争心を生まず、結果として衰退から逃れられない。

このようなルール上の特徴と、一時期は世界的な広がりを見せたという稀有な文化的事例として、アゼルバイジャンではユネスコ世界無形文化遺産競技部門に指定されている。

 

新スポーツとして

ニュースポーツの概念は20世紀に誕生した。

選手の体格や人種や性別にとらわれず、純粋に身体を動かす喜びと、スポーツによる社会的なつながりと健康維持のために考案されたスポーツ概念である。多くの競技では勝敗は決さず、楽しかったかどうか、効果的な運動であったかに重点が置かれている。

このような観念はスクルタスに見られる特徴である。

クルタスは古代に生まれた新スポーツとして認知されているが、一部意見では美徳のコミュニケーションに重点が置かれることからスポーツとは一線を画すものであるともされており、その分類には議論が絶えない。*4

 

著名な選手

松崎 光陽(日本スクルタス協会)

・ジェイソン・マルコム

・ロバーツ・K・クリオン(サラトガ大学教授)

 

 

*1:文献に残る19世紀のシュヴァルツヴァルト大会が代表例

*2:マーク・ザッカールト『スクルタスの歴史と論争』

*3:文献に残る最長記録は1766年イランの試合。7日間続いた。

*4:ロバーツ・K・クリオン『スクルタス言語論』