だいたい朝はNUMBER GIRL(たまにジミヘン)ばっか聴いて、帰りはサカナクションとかヨーヨーマとかNUITOとかミュージカルのサントラとかまぁ、いろいろ、聴いてる。
どうしてこんな選曲かって、理由はひとつしかない。
仕事行くときは凍りかけた包丁みたいなキンキンのロックンロールで「労働鬱」を掻き切る必要性に迫られているからだ。
NUMBER GIRLはそれに最適なんである。
田渕ひさ子のギターがおれの神経を極度の冷凍状態に尖らせて、しかしながら、血流を昂らせる。それは本当の本当に素晴らしい音楽だ。
帰り道に聴く音楽はなんだっていい。金曜の夜はサカナクションでテンションを上げるかもしれない。水曜の夜はヨーヨーマのチェロで心を癒すかもしれない。くるりは帰りの坂道でよく聴くかもしれない。
毎日のようにそうやって、道を、外を、音楽で塗りつぶしていた。
今朝、air podsの充電が切れてしまったようで、音楽が聴けなくなった。音楽どころかノイズキャンセリングもできない。
充電活動を怠った自分を呪った。
イヤホンを外した街は騒音に溢れていた。
電車、めちゃくちゃうるさい。こんなうるさいものが走ってれば、もしも自分が地の神だったらブチギレてただろうな。変なウイルスを撒き散らしてたかもしれん。そんくらいうるさい。駅のホームなんて立ってられない。
いつの間にか私の耳は騒音アレルギーになってしまったようで、耐えがたい思いをした。
だが、イヤホンを外してよかったこともあった。
今年は蝉が全然いないなぁと思っていたけど、イヤホンを外したらわんわん鳴いて鳴いて、そこらじゅうで夏を謳歌する蝉の声が聞けた。
蝉の声がノイズとしてキャンセリングされて聞こえていなかっただけだったのだ。
会社へ向かう並木道で蝉時雨に浸り、気分が晴れやかになった。蝉の声は生命の力を得られる感じがする。命の限りを燃やしていくような昂りだ。
蝉はロックなんだ。
また、帰り道では、道路に座り込んでる大型犬と飼い主がいて、その会話を少し聞けた。
「ほら、こんなとこで座ってもしょうがないでしょ。立ってよ。帰れないよ?」
飼い主が首紐を引っ張って話しかけていたが犬は聞く耳持たず、夕日の沈む空の色をジッと見つめていた。
なんだかその会話と様子に癒された。
犬とか猫って、話しかけるよな。で、応えてくれるときと無視されるときあるんだよな。
実家の犬と猫を思い出した。
イヤホンがなくても、ヨーヨーマを聴けなくても、癒されるんだ。
音楽には音楽の救いがあるように、イヤホンを外した世界にはそれなりの救いがある。
たまには充電を忘れてみてもいいかもしれない。