「いいよー」と噂だったアニメ、『ODD TAXI (オッドタクシー)』をアマプラで観た。
本当に良かった。
小さな事件、小さなきっかけ、小さな謎が関連性を持って繋がっていき、最後はひとつになって炸裂する。伏線の回収のシナリオも見事でありながら、アニメだからこそできる表現性にも挑んでいて、またセリフの言葉回しも秀逸なところがあり、すべて狙って出している面白さなのでたまげた。本当に有能な人たちが作ったのだ。
登場人物は皆動物だ。
『BEASTARS』を読んですぐに観はじめたので、最初は草食獣と肉食獣が混在して和気あいあいしていることに違和感を覚え、これはすごくセンシティブなんじゃないかとハラハラしていたが、『オッドタクシー』はそこが主題ではなく、単に登場人物が皆動物の姿であるというだけだった。
「どうして動物なの?」という一番最初の疑問はアニメの世界にはまっていくうちに薄らいでいき、さして問題ではなくなる。むしろ動物のデフォルメがされたキャラクターに愛着を覚えて、人間よりいいとすら思えてくる。
話が進むうちに「動物である」利点が如実にあらわれてくる。
可愛げのある、表情豊かな動物たちが動くことで、話のシリアスさが薄まるのだ。
きっと人間でやっていたらシリアスに圧されてコミカルな部分は削がれていただろう。それだと有象無象の社会派サスペンスの二番煎じになる。
この表現方法はアニメや漫画、二次元の表現方法でしか違和感なく表せなかったと思う。
キャラクター造形だけでなく、背景や色遣い、音楽も良くて、ローファイなテンションと都会的な夜の情景を、誇張することなく描き出している。OPが大好きだった。
彼は主人公の敵で、頭がキレて極悪非道な人物なのだけど喋り方に特徴があってそこがいちいち面白くて好きだった。
韻を踏んで喋るのだ。ラップみたいに。
スネ夫が自慢話するときに流れる曲があるように、矢野が喋るたびにビートが刻まれて彼専用のBGMが流れる。
めちゃくちゃウザくて、やってることは極悪人だし、なんだか人を舐めたような態度は底知れない特有の威圧感があるのだけど、やはりキャラがヤマアラシで可愛いのでシリアスさに呑まれた恐怖感は無い。
矢野の「ギャップ」という特徴は、このアニメ全体の特徴を反映している。
ポップでおちゃらけているのにシリアス。
そのギャップが全体的に気持ちが良かった。
『ちいかわ』とは違うけど、やっていることの思想は近いものがあるかもしれない。
OPで矢野が出てくる40秒~あたりからラップ調になるのも芸が細かいよなー。
ポップでシリアスでローファイで、ときどきとてもアツい。
いい温度感のアニメだった。見ていて気持ちが良いアニメってあるんだなと思った。