蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

運転のコツ

動車を運転するのは好きだ。他に車がいなければもっと楽しいと思う。

私は法令を遵守することに心血を注いでいる。自動車を用いてどこかへ移動することよりも、法令を遵守することが目的と化していて、うまく法律を守れると、日本国民として誇らしい気分になるのだ。

荒れた運転をする人や、違反スレスレの運転をする人を心底貶している。非国民、とすら思っている。

なぜ私は法令を守ることに専念しているのかというと、運転適性検査で最低点を叩き出し、「重大事故多発」のレッテルを貼られているからだ。

油断すると危ない場面は多々あり、これまで何度も冷や汗をかいてきた。

こういう私だからこそ、法令を守り、周りをよく見て、安全運転をかなり心がけないといけない。

 

周囲の「優秀な」ドライバーからしたら私の運転は競馬場にロバが並んでいるようなものだろう。遅いだけではなく、種類が異なる。挙動が違う。

我ながら危なっかしくて見ちゃいられないこともある。

ドライバー同士のコミュニケーションがあるのだが、形式的なものはできるとしても、察し合いを全くできなくて、空気が読めない。

そのため場合によっては相手にクラクションを鳴らされたり、ミラー越しにものすごい睨まれたり、呪詛を吐かれたりする。

「なんかぶつぶつ言いながらこっちを睨んでるよ!」と同乗者に教えられても、どうしようもない。

「悪ぃ!」と空謝りしておく。

 

初心者の頃は周囲の状況を気にしすぎてて、運転がつらく、またそれによってかえって安全とは遠い運転になってしまっていた。

怒られるのって嫌だし、煽られもする。すべては私が悪いのだが、それにしても暗黙の了解は多く、現場の判断は瞬時にせねばならず、それを思うと運転は暗澹たるものであった。

だが、ある日なんとなく海外の交通渋滞の動画を見てみると、縦横無尽・ルール無用とばかりに走行するバスやトゥクトゥクやボロボロのセダンの姿に、私の運転技術なんて些細なものでは無いかと思えてきたのだ。

最低限のルール(車は道路を走ることとか)を押さえていれば免許が必要なさそうな世界ではギリギリ事故にならなければいいという安全基準で運転しているとしか思えなかった。

こんな環境に比べたら、日本の道はなんて平和なんだろう。

私は恵まれた環境に感謝した。

 

それ以来、煽られても呪詛を吐かれても怖くなくなった。

申し訳ないな、と少しは思うけど、でも事故にならなかったんだからいいじゃないか、と。インドに比べたらいいもんじゃないかと。

充分に気をつけてこの状態なんだからもう仕方がないじゃないか。

それで私は運転を楽しめるようになった。

 

読み返してみて、なんかふっきれた人みたいで非常に危なっかしいな。