蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

水を買う

2リットルペットボトルの水を買おうと思って1年が経った。

ずっと買えないでいたのは本当に理由がなくて、単に忘れていただけだ。

だいたい日中に「今日こそはAmazonで水を買うぞ」と思っても、仕事が終わるとそんなことは忘れて、1週間かそれ以上思い出さずに日々を消費し、ある時また急に「水を買わねば」と思うのだが、そこですぐに行動しないため買い忘れる、という救いがたい物忘れの連続で水を買えないでいた。

水の優先度が低かったのだ。

脳のメモリが御粗末なので容量を節約するために優先度の低いものから切り捨てて忘れていくようにできていて、これは自分でも不思議なほど、まるでなかったことのように忘れる。ふつうに仕事でも支障をきたしている。

 

そんな水を買えない日々を人知れず送っていたのだが、先日ついに買った。

ここのところ地震が頻発していて、いよいよ水くらいは備えておかねばと水の優先度が上がったのだ。

水を買うのは簡単だった。

Amazonを開き、水、と検索して好みのものを選びボタンを押すだけだ。

1年と2分で買えた。

はは、買えたぞ。あまりの簡単さに笑ってしまった。ナムが水を買えなくて天下一武道会にまで出場した苦労を思えばなんてことのない容易さだ。

買い放題じゃないか。私は万能感にしばし浸り、他にもちょっとした掃除ロボやミラーボールなどを買おうかと思った。なんでも買えるぞ。すごいぞAmazon

ともかくこれで脳のリスト「水を買う」にチェックを入れられた。まったく私はなにをこんなことでズルズル先延ばしにしていたのだろう。馬鹿だった。

 

水は休日の早朝にやってきた。

インターホンで眠りを覚まされて不機嫌だった。休日の眠りの深い8時ちょっと過ぎにやってくるなんて、こんなことをするのは青系の業者に違いない。

寝ぼけ眼で相手の姿もろくに見なかったのでわからないが、緑黄系の業者ではなかった。

配達員はやたらと大きな声で「重いですよっ!」と言って私に水を渡した。

「サインは!結構!ですのでっ!!!!」

私は一言も発せず、業者は脱兎のごとく玄関から去った。

寝ぼけた意識で水をその場に置き、なんだか疲れてしまった。重かったし、いろいろあったが、とにかく水を買えた。

 

2リットル8本。

やれやれといったところか。今度は置き場所がない。