蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

続・豆を数える/朗読の仕事

1か月くらい前に書いた「豆を数える仕事」がいまだに解決していない。

arimeiro.hatenablog.com

ここで言う「豆」も「数を数える」仕事内容もカモフラージュなので、そういう仕事があるんだな、程度に読んでいただきたい。

ゴミまみれの部屋に散らばった赤と黄色の豆合計2600個をそれぞれ拾い分け、番号ごとに並べかえてどの豆が揃わないか一粒ずつ確認する、そんな仕事だ。

豆の数が合わない。その問題が浮上して一か月経ったが、解決のめどが立っていない。

豆の数がどうしても合わず、失われたひとつの影も形も、むろん匂いも声も、気配を感じない。

台帳上の数と実際の数が合っていないのが問題だ。過去の履歴にも怪しいところはなく、それがまたより一層怪しい。

豆を一つ一つ精査して、すでに出荷したものについては記録をもとに情報を確認しているが、にっちもさっちもいきそうにない。

なぜこんなことになっているのだろうか?

根本的な原因は不明だが、私がひとつの仕事を怠りさえしなければ防げた、あるいは簡単にリカバリができたかもしれなくて、後悔している。ほんの一瞬の気のゆるみだったのだ。

なにを言っても言い訳になるので私は私ができることをするしかなく、できることはすべてやるしかない。

もうダメそうだったらめちゃくちゃ怒られたりなんらかの文書を書かされることになるかもしれないが、それももうしょうがないと思う。どんな処罰が下されようとも甘んじて受けるつもりだ。どうせ死にはしない。

ただ私自身が怒られるのは良いのだが、先輩や上司に泥を塗るようなことになったらさすがに情けなくてつらい。

なんとかしたい。

 

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私は豆を数える仕事以外に、不定期で別の仕事もこなしている。その仕事はまったく異なる業務ながら、私の所属する会社からヘルプのようなかたちで呼び出される厄介な社内業務なのである。

それは私の本来の業務内容からかけ離れていて、例えるなら豆の仕事のかたわらで朗読の仕事をするようなものだ。

「朗読なんてできません」と言っても上司には通用しない。

「文字が読めればなんだっていいんです。みんながやっていることだし、バイト代もちゃんと出ますよ。だから来月、頼みます」

朗読の仕事は不定期にやってきて避けようがない。チームのメンバーが当番的に対応し、休日を返上して朗読会へ出かけるのだ。ちょうど「バイト代」くらいの給料が出る。

休日を返上してバイト代を稼ぎに行くが、本職とは一切のかかわりがないため振替休日は無い。他の人より一日休みを減らしてバイト代を貰う。

私の本職は豆を数えることであり、朗読ではない。

だいたい、豆を数える専門職の会社なのに、朗読もやっているのが意味がわからない。豆を数えるスキルと朗読のスキルのどこが合致して業務の手を伸ばしたのか、弊社七不思議のひとつとされている。

その朗読当番が私にも回ってきた。

「すみません、今回は朗読会当日に用事があるのでどうしても行けません」と断った。

上司は「そうですか。プライベート重視で大丈夫です!」と快い返事をくれて安心した。だが直後。「じゃあ、次回の朗読会は蟻迷路が担当で入れておきます!」と上司は言った。

 

仕方がないことなのかもしれないし、上司は悪くは無いのだけど、このバイトから逃れるにはもう転職をするしかない。

豆の紛失がバレる前に、朗読会が始まる前に、転職をしたい。

次はわたあめを作る仕事がいい。あるいは雲のかたちに名前を付ける仕事。