蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

3年目の変化

「蟻迷路さん的にはどう思いますか?」とクライアント側の上司に訊かれた。リモート会議での一場面である。

私の仕事の指示系統は、業務上他社に派遣されてそこで仕事をしていることから、クライアント側の上司と自社側の上司二人から指示を仰ぐ体制になっている。

この日は私の先輩と自社側の上司が急遽、会議を欠席したので私だけが代表として出席することになった。

といってもあらかじめ先輩二人が来れないことを知っていたわけではなくて、会議がはじまってからチャットで「別の会議出てるから行けないわ」と教えられた。クライアント側の上司も話を聞きたかったのは私なんかではなく先輩たちだったろうから、この時点で不機嫌だった。

私はうまく立ち回らなければならない。

「私の見解としましては ────」

私なりに考えを述べた。状況を説明し、なぜこのような事態に陥っているのか原因を説明し、その原因はクライアントの部下のミスだったのだがそれは明言せずにあくまでも事実だけを並べ、今後どうしていく方が良いか、問答を重ねながら答えた。

私にも後輩がいる。年上だがいちおう後輩だ。後輩も会議に出席していたが、ここでなにかを言えるわけもないので私が頑張るしかない。

私も2年前はこうだったな、と後輩のアイコンをふと見て思った。

私はすっかり社会人3年目になったのだ。

 

私の説明はたどたどしく、要領を得ない部分(かなり誤魔化したところ)もあったかもしれないが、一応できるだけの説明はしてクライアントには納得してもらえた。

会議のあと、クライアントの上司に一対一で呼び出されてさらに詳しく状況説明を30分ほどした。これは悪い傾向だが、この業務に関して私が責任者だと思われているらしかった。そうなのかもしれない。

 

いつも会議のときは先輩が主に発言をして、私は補足説明をしたり質問を投げかける程度なのだが、はじめて先輩のポジションで参加して私ってその気になればつらつら説明できるのだと、新しい自分の発見に繋がった。

でもできれば傍観している方が楽だ。

私は政治的なこととか企みとか瞬時な頭の回転を要するものが苦手なので、なんでも正直に言うしかない。たぶんあまり言わない方が良いこととか、自社にとって都合の悪いことや、そうすることで動きにくくなったりあるいは動きやすくなったりすることがあるのだろうけどまだそこまで頭が回っていない。

やれやれ。

めんどうくせぇなぁ、と思った。

久しぶりに煙草を吸いたくなった。