蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

炊飯器を解雇/土鍋で米を炊く

が家の炊飯器はクソである。

クソ、と書いたが本当に糞で塗り固められた人糞漆喰炊飯器というわけではなく「性能が終わってる」の意味でのクソである。

大切なことなのでもう一度書くが、我が家の炊飯器はクソだ。

「鉢植え」「脳みそが空っぽのロボットの頭部」「パン派」「魔封波の入れ物にもなれない」「使いにくいゴミ箱」「丸いなにか」「捨てるのも惜しくない」「ベランダで雨水を溜めてろ」

以上の暴言は役立たずの炊飯器に向けて吐かれたものだ。

「使うたびに憎しみが増す家電」

使うたびに憎しみが増す家電ってなに?

頼むからこれ以上おれからなにも奪わないでくれ!と天に腕を伸ばして嘆きたくなる炊飯器が我が家の一角を占領している事実。私の人生これでいいわけがない。

こうまで炊飯器にヘイトをぶつけているのにはもちろん理由があり、無論正当な理由である(不当な理由で炊飯器を憎悪するほど暇じゃない)。

 

米が上手く炊けないのだ。

 

近頃、炊飯器で米を炊くと、一部分は固くなり、一部分は水っぽくなり、一部分は集合して一塊になってしまう。

水の分量は間違えてないし、炊飯釜の中もきちんと拭いてるし、炊飯器が傾いているはずもない。思いつく原因をすべてあたって、掃除したり、置く場所を変えたり、水の量を微妙に変えてみたりしたが、コンスタントに失敗した米が炊き上がる。

原因がわからないとなると、ある日突然反抗期に入りまともに炊爨(すいさん)しなくなったのではないかなんて突飛な発想になるが、しかしこれは気が狂った論旨ではなく論理的な帰結で、考えれば考えるほどそうとしか思えないのである。

なんらかの意思が働いて仕事を放棄している。たかが炊飯器にも組み込みのコンピュータは搭載されているわけで、昨今の技術的発展を考慮するに、炊飯演算機が「意識」を獲得したとしてもなんら不思議ではない。

今まで普通に炊けていたのに年明けごろから様子がおかしいのはきっと、私たちが正月休み明けに堕落しているのと同じことで、私たちの想像が及びもしない憂鬱を炊飯器なりに抱えているのかもしれない。

せっかくおかずを美味しく作れても米が不味いとめちゃくちゃ萎える。なにもかも台無しになる。気分的には演奏会の静かなところで不届き者のケータイが鳴ったり、映画館でずっと喋ってるカップルがいたり、デートの前日にニキビができるのに等しい。米が不味いということが「台無し」を生み食卓を侘しくする。惨めな思いにさせる。怒りをきたす。

安炊飯器なんて買うからよくなかったんだ。最低から2番目のランクだった。最低よりかはマシだけど酷いことには変わりない、そんなもの、中途半端なんだから縁起も悪い。

私は言ってやった。

 

「炊飯器的憂鬱があったとしても、申し訳ないけど弁解の余地はないよ。僕は君の憂鬱を理解できない。君が僕を理解できないようにね。

米は主食なんだ。すべての人に美味しく食べる権利がある。

君は僕の人権を侵害している」

 

そうして私は、米を土鍋で炊くようになった。

 

土鍋で炊くのは骨が折れそうだ、面倒臭そうだと思われるかもしれないが、実のところめちゃめちゃ簡単でほとんど手間にならない。

簡単にやり方を書いておこう。

    ※[]内は工程にかかる時間

 

・研いだ米を10分ほど水につける(やらなくてもいい。おまじないみたいなものだから) [0〜10分]

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・水は米と同じ分量を土鍋に入れる。土鍋をコンロに乗せる(ベランダや本棚に置いておいても米が炊けるわけではないから)。

・10分くらい時間をかけて水が沸騰するのを待つ。蓋はしなくていい。出来るだけ10分で沸騰するように火を調整したほうがいいけど、そんなの家庭の調理器具によるので「できるだけ10分」でいい。我が家の場合はどんなに弱火にしてもだいたい7分くらいで沸騰しちゃう。問題ない。[6〜10分]

・沸騰したらトロ火にして蓋をする。このとき蓋を開けてはいけないと世俗では言われているが、開けても大丈夫。でも開けない方がいい。米がぶくぶく膨れ上がってて怖いから。[10分]

・火を止めて蓋をしたまま5分蒸らす。ここも急いでるなら蒸らすのも1分くらいで大丈夫。[1〜5分]

 

たったこれだけで炊飯器よりもふっくらとしてツヤツヤした米が炊ける。おこげが美味しくて嬉しいし、土鍋で炊くところに有難みがある。

1合なら早ければ20分くらいで炊き上がるので炊飯器の「早炊きモード」と時間の差はほぼない(むしろさらにはやい)うえに、美味しい。炊飯器臭くない。

土鍋しか勝たん。

炊き上がった米の写真をいつも撮り忘れる。あまりにも美味しそうなので我を忘れてしまうのだ。

土鍋で炊くと米のポテンシャルを最大限に引き出すので米がやたらと美味くなり、変な表現だが「米で米を食べれる」ようになる。米のおかずが米になるので、普通のおかずがちょっと失敗しても問題にならない。米と佃煮だけでいい。

ただ保温ができないのがひとつウィークポイントだが、美味しく炊けた米は冷めても美味しいし、冷めたらラップに包んでチンすればいい。

 

人糞漆喰炊飯器は近いうちに打ち捨てようと思う。躊躇がまったくない。はやく消えてほしい。この世から。その代わり土鍋をもうひとつ買おうかと思ってる。新しい炊飯器を買うつもりがない。