蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

somethingとは何か

Beatlesの曲の内から10曲、マイベストを選べと言われたら候補に挙げる曲は20曲くらいある(矛盾)のだけど「something」は確実に入ると思うし、えりすぐりの10曲に選ぶのも間違いない。

youtu.be

 

なんて優しい曲だろうとも思うし、よく聴けば聴くほど、すべてのパートが完璧でありながらところどころ攻めていてそれを無理矢理なものとは思わせない、卓越した曲であり、バンドの底力を思わせる曲であるとも思う。

 

「Yesterday」とか「Let It Be」とかに比べたら一般認知度はそこまで高いとは言えない曲だけど、カバーされた数は噂によると「Yesterday」に次いで多いらしく、多くの人に長い間、愛されている曲だとわかる。

私もその一人で、ギターをコピーしてたびたび音源に合わせて弾き楽しんでいる。

半音ずつ下がっていくところ、曲が展開してリズミカルに和音を刻むところ、リフレイン、ギターソロ。この曲の温度が弦に触れている指先からお腹の底までじっくり染み込んでいく感じがする。

アンプのギラギラした音色をできるだけ絞って、恋人と夜中にこっそりお喋りをするみたいに弾くのがコツだ。

 

youtu.be

 

ポール・マッカートニーがこの曲をカバーするとき前半部分をウクレレで弾くのだけど、これ以上に最高なアレンジは無いと思う。そしてカバーしてくれるのがひどく嬉しい。友だちの曲をカバーするってどういう気持ちなのだろう。ポールのライブではスタンダード・ナンバーになっている。

 

この曲に関しては、ポールの弾くベースがよく取り沙汰されて議論と称賛の的になっている。ベースはいちばん低い音で、通常はメロディの底を支える役割をするのだが、この曲においてその常識は覆される。

歌と同音量くらい大きく前面に出てきており、メロディとギターとハモりながら細かい連続した音でリズムを作り、曲の底を支えている。歌い上げるようなベースであるにもかかわらず、メロディの邪魔をしていない。

これは物凄いことだ。ベース冥利に尽きる曲だ。私がベーシストなら、一生のうちでこんな旋律を生みだせればそれで満足してしまうかもしれないほどの傑作だ。

ドラムスも、いい。リンゴの哲学が垣間見える巧みなドラムだ。

最低限の音で最低限のリズム、ほとんどベースに委ねていると言ってもいいほどで、むしろ曲の雰囲気を醸し出すことに徹底しているようなのだ。

リンゴのドラムは「たま」石川浩司さんのパーカッションにも通じている気がしていて、つまりリズム楽器である以上に曲の雰囲気を演出する要素が強い。

三連符を多用した粒立ちのリズムが心地よく、ここから激しくなるのかと思わせたところで息を吐き出すように緩やかになって、ベースに身を委ね、楽器のハーモニーにたゆたう。

コピーはできてもこれを生み出すのは、感覚的にひじょうに難しいと思うのだ。ドラムを叩けない私が言うのだからそうに違いない。

 

 

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ジョージ・ハリスンBeatlesのなかではジョン・レノンポール・マッカートニーに隠れて地味な存在だったけど、「Something」の収録された『AbbeyRoad』ではもうひとつの名曲「Here Comes The Sun」と共に存在感を放っている。

最後のアルバムの中で2曲ともに輝きを放つジョージ・ハリスン

ジョージの曲はどこか影があると思うのは私だけだろうか。

その魅力にはBeatlesにいたジョージ・ハリスンだからこその言葉にしがたいsomething(=なにか)がある。

 

ときどきSomethingをハミングしながら、その曲が染み込んでいくのを感じる。