蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

二軍のTシャツ

今週のお題「二軍のTシャツ」

 

がお出かけをするときに着ている服は持っている服のうちのほんの一部、まさに氷山の一角で、衣装ケースの中を占める服のほとんどが「二軍」レベルの、要するにボロボロの服たちばかりである。二軍と呼ぶのも恐れ多い。草野球にすらなってない。

8割くらいが二軍草野球レベルのTシャツなのでそれらは部屋着に回し、2着をお出かけ用として運用している。そうしていると必然的に、私は出掛ける時の服がほとんど同じになる。

いつも服が同じなのはなんら問題じゃない。漫画のキャラクターだっていつも同じ服を着ているじゃないか。それに出かける相手は妻しかいないのだ。

休みは土日だけだから出かけるとしても通常一日のみなのでそんな着回しでも問題ないのだが、これが泊りとか土日も出掛けるとなると服がなくなるので困ったことになる。なので、2~3日とも出掛ける場合はそういった予定をそもそも組まないように調整している。

ふつうに服を買った方がいいとは自分でも思っている。

思っているのだが、服を買う前に本を買ってしまったり、グルメスパイザーやボウリングの爪切りなど余計なものを買ってしまうので服へ割ける資金がない。

服を買うときはいつも「ほんとうに着るものがなくなった」危篤の状況ばかりで必要に迫られないと購買意欲が湧かない。妻に言わせたら今の私の状況は危篤の状況らしいが、そこでも価値観が合っていないので私を説得するには至っていない。

 

二軍のTシャツたちはもとは一軍のTシャツたちだった。

7年くらい前から着続けた結果、雑巾の縫い合わせのような仕上がりとなって二軍へ降格したのである。

いつか食べたスパゲッティのシミがあり、肩の部分には穴が開き、プリントは薄れ、汚れた犬みたいなへんなにおいがする。

こういうのを着ているとどんどん貧乏になっていく。そんな気にさせられる。薄汚い服を普段から身につけているとお金が逃げていく。そんなテーマの生活実用書が幻冬舎から出版されていてもおかしくない。

たしかに二軍以下のTシャツを着ているとみすぼらしい気がしないでもなくて、たとえ部屋着であったとしてもこれをこのままにしておくと私ばかりか妻まで焼き討ちに遭うような残酷な未来の予感を抱きかねなかった。

なので、二軍Tシャツを捨てることにした。

もちろん全部捨てるわけではなくて、着ていて惨めな気持ちになるかどうかで判断し、悲惨な運命を思い玉川上水に入水したくなるようであればそのTシャツは迷わず捨て、そうならなければ残す。

惨めさ判定テスト。通称M-Testにより厳格な審査が行われた。

 

だいたい10着ほどTシャツがあり、そのうち4着を迷わず捨てられた。もう二度と着るものかと憎悪の念を抱いた。

のこり6着のうち、2着は一軍であとは二軍。

二軍に残ったものどもはさながら歴戦の勇士の表情で、襟首はよれ、宿命的なシワが老人の目元みたく刻まれている。でもまだ大丈夫そうだった。すくなくとも一年くらいは。

 

このペースでTシャツを捨てていくとおそらく来年あたりに着るものがなくなる可能性があるので、やはりぼちぼち買いそろえた方がよさそうだ。