蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

友人二人とキャンプ!

今週のお題「キャンプ」

 

ャンプの話題を目にすると思い出すのが、去年の夏、中学爾来の友人二人と行った一泊のキャンプだ。

僕たちは親友同士で、これまでもさまざまな苦楽を共にしてきたもはや兄弟みたいな間柄だけど、このキャンプは凄惨を極めたため友人関係に亀裂が入ってもおかしくなかった。

キャンプ初心者である僕たちに道具を貸してくれたのは友人のお兄さんだった。今思えばお兄さんを連れて来て指導してもらうべきだった。

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クルマで千葉県のオートキャンプ場へ向かい、夕方からテントを設営した。

テントの設営方法がわからないので、勘である。ガタガタのチームワークで組み立てたテントは今にも動き出しそうで、『ハウルの動く城』の終盤に出てくるお粗末な城を連想させた。

そして運の悪いことに、このテントは成人男性二人しか収容できそうになかった。

 

行きがけにスーパーで食材や木材を調達したとき、友人の一人がギリギリになって百均へ向かい、電池式の小さなランプを買っていた。

「おれたちはランプを持っていない」と彼が言うのを僕ともう一人の友人は小馬鹿にした。

「キャンプだよ。なんてったって、火を焚くのだから、ランプなんて意味をなさないよ。僕たちは猛烈に火をくべるんだから」

「ちゃんと管理されたところだから灯りは心配ないと思う。街灯もあるらしいし」


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実際に夜になってみると、街灯は僕たちのスペースには無く、火はいくら焚きつけても灯りとなるまでには燃え上がらず、写真を見てもわかるとおり終始暗さとの戦いだった。

百均のランプは小さすぎて手元しか照らせず、僕たちはスマホのライトをつけて最低限の足元などを照らしながら、肉を焼きまくった。明かりが無いので肉が焼けているのかどうかもわからず、生肉による食中毒を避けるためにすべて「よく焼き」にした。焦げ臭く、暗いので味もよくわからない。

「なぜ灯りがこの百均のやつしかないんだ」全員が憤っていた。

外で食べる美味しさというものは感じられず、ひたすらに煙たくて、焼くのに時間がかかり、火の管理が面倒なだけだった。焼く手間が発生するので落ち着けない。次第に会話も少なくなって、僕はその場を離れた。

他のテントでは、テント周りをキラキラにライトアップさせたり最小限の火力でうまそうに骨付きのソーセージを食べたりしていて、はたから見てもじつに充実した様子だった。丁寧にドリップしたコーヒーがじつに美味そうだった。

僕たちのスペースは暗幕が落ちたかのように暗く、近づいてみないと人がいることさえわからないほどで、煙の向こうには暗澹たる様子の二人が生焼けの肉を串に刺してめらめら燃える炭を力のない瞳で見つめているのだった。

なんだこれ。

 

友人二人はテントで、僕は車の中でシートを倒して眠った。

極めて暑く、ときどきエンジンをかけて冷房を入れた。朝は雨が車を叩く音で起こされた。当然、全員が寝不足だった。

僕たちはとっとと片付けて、早々にキャンプ場を後にした。

道中は千葉を回って海を眺め、ひたすらに海を眺め、帰った。

 

キャンプで最も大切なのは入念な準備と想像力だ。

今回は蚊に刺されたり頭皮が煙臭くなったくらいのリスクで済んだけど、ケガをしたり病気になる恐れだってあったはずなのにそれに対する準備もしていなかった。

準備と想像力がすべてにおいて欠如していた。中学生の頃行ったキャンプ体験的な記憶を頼りにしすぎていたのだ。

何が必要なのか、どんなキャンプ場なのか、なにを食べたいのか、なにをしたいのか、きちんと整理して相談し、準備をして備えるべきだった。もう大人なのに。社会人なのに。

 

ところで友人関係にヒビが入りそうだったが、それは案外というか、全然大丈夫だった。

次に会ったときには「もう二度とキャンプはやらない」と笑い合った。

「10年に一回キャンプしよう」

「戒めを込めてね」