蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

ジョジョ第4部の作中舞台について/億泰大好き/成長がテーマ

ョジョの第4部『ダイヤモンドは砕けない』を久々に読み返した。

第3部から続くスタンドバトルはさらに難易度を増し、戦いはより複雑になっていく。この特徴は部が進むごとにエスカレートしていくのでまぁ良いとして、4部の特徴はなんといっても「ひとつの街から出ない」ことにあると思う。

1,2、3部は『ジョジョの奇妙な冒険』というだけあって冒険、つまり旅に出て各地を移動し行く先々で困難に直面する、そしてゴールがある、というのが物語の型だったが、4部では杜王町というひとつの街で起こるさまざまな怪異やスタンドバトルに主人公たちが「遭遇する」のが物語の型となっている。

これはたぶんだけど、スタンドバトルという形式上で3部とはちがうタイプの敵を出したかったからひとつの街に固定したんじゃないかと思う。

3部では「主人公たちから会いに行く」言わばRPG型の敵がいて、各地で会敵したり移動の途中で相手が「追ってくる」パターンが多かったが、4部では「待ち伏せして罠を張る」タイプの敵が多数登場する。誰かに話しかけたら変な奴だったとか、鉄塔に近付いたらヤバイことになったとか、漫画家の家に行ったら酷い目に遭ったとか、そんなのばっかりだ。

で、これがホラー漫画たるジョジョにおいて重要なホラー要素となっていて、これまでのホラー要素には旅にまつわる「ロマン」と「スリラー」があったけど、4部では街という卑近な舞台によってひたひたと後ろからはいずり襲われるような「サスペンス」がある。気がする。

ティーブンキングの『IT』みたいな、自分の暮らしている街で起こる得体のしれない出来事の恐怖感は、部屋の壁にいつの間にか巨大な虫が止まっていたときのような、「自分のものが自分のものではなくなる不快感」すら覚える。

私はシリーズを通して4部がいちばんホラーとして怖いと思ってる。

 ちなみに、次の5部ではイタリア国内の旅になって明確に「追ってくる」敵が現れ、6部ではまた刑務所の中という固定されさらに限定された空間が舞台となる(後半は移動するが)。

 

4部の魅力はなんといってもキャラクター。

康一くんがスタンドに目覚めて成長していく姿も格好いいけど、あらためて読んで気付いたのは、第4部とは主人公・仗助の相棒、虹村億泰の「兄を克服する」というテーマが一貫していたのだ、ということだ。

億泰はなんでもかんでも兄・形兆の言いなりになってきて自分をアホだと思い込み自分の考えを失くしてしまった憐れな男だ。兄の死によって呪縛から逃れられたかと思いきや、喪失した兄がさらに存在感を放ち、億泰は自分が「できない」度に兄の存在を思い知らされるみたいだった。レッド・ホット・チリ・ペッパー戦でしくじって、兄を克服できなかったときがとくに顕著だった。

たぶん、兄と二度と対話ができないからこそ、兄の意思とは無関係に自分を貫けない、という不可能性が生じてしまったのだろう。

吉良吉影に重ちーが殺されたとき、億泰はひどく動揺していた。

重ちーは金にがめつくて欲の塊みたいなやつだったけど、なんかほっとけねー弟分だった。億泰にとって、本当の家族ほどではないけれど、守るべき存在になったのかもしれない。

そんな重ちーが、目を放した5分の間に、あっさり何者かによって跡形もなく「消滅」させられてしまい、億泰はまた喪失を経験する。

自分をかばって死んだ兄と、弟分をあっさり殺された億泰は自分の姿を重ねて、ふがいなさとか自責の念とか怒りとかむなしさとか、あらゆる感情に呑まれたのだろうか、その場ではキレもせず泣きもせず、気まずそうにしてどこかへ行ってしまう。

億泰は兄を克服できない。

でも最後に死にかけたことによって億泰は死線をさまよいながら兄との対話を果たす。

そこではじめて自分の意志を兄へ告げるのだ。

億泰の「成長」がそこでじつにあっさりと描かれてしまうけれども、物語のひとつのシメとして重要なシーンだし、それがきっかけとなってラストバトルを勝利へ導くので、感動せずにはいられない。

 あとさ、億泰の食レポ大好きなんだよな。よくわかんないんだけど感情が乗ってて。アニメでもサイコー。

 

主人公・仗助の成長は序盤のアクアネックレス戦で片付いちゃうところがある。

街を守るという覚悟が決まっちゃうんだよな。父親代わりだった祖父の死をとおして。

祖父を超えられないとか、父親の呪縛がとか、スタンド能力の成長がとか無くて、甥の承太郎よろしく序盤で精神性が完成されてしまう。

5部のジョルノも精神的には最初から完成されてて、6部の徐倫でようやく主人公の成長譚が見られる。でもこれもしょうがない。スタンドとは精神力の権化であり、精神が強くない主人公はとっとと負けちゃうから、強くなくちゃいけないんだ。

だから4部では周囲の人間で「成長」を補っているのかもしれない。

 ちなみに個人的に5部の精神性のテーマは「協調性」なのかなと思ってる。

 

語るべきことが多い4部だなぁ。作者の故郷をモチーフにしていることもあって、なんだかのびのび描かれている印象があって大好きだ。