蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

初出勤

しい会社に入社した。

私服勤務になるのだけど、初日だし、無難にスーツで出社した。スーツで登場するや否や先輩に「みんなで、どんな服装で来るか話をしていた。やっぱスーツだよね初日は」と笑われた。獅子舞の格好をしてビビらせるよりずっといい選択だと思う。

必要書類の記入や提出、捺印、給与の説明などひと通り受け、自分のデスクに就くが、とくにやることもないので社内規定を読んで過ごす。

「なにかわからないことある?わからないということがわからない状態かもしれないけど……」と社長に苦笑される。笑顔の多い会社でなによりだ。

その後、午後からは実務も少しやらせてもらえた。

小さい会社なので人の顔と名前もすぐに覚えられた。

なにかとルールはあるようだが、ある程度は許容されているというか、なあなあなところもあるみたいで、自由にすればいいという方針らしい。とは言え自由にするにしても、むしろ新人のうちはそれが難しいのでとりあえず周りに合わせようと思う。

わからないことだらけ、そして新しい環境。マグロが小さい生簀に放流されたかのような異物感を自分に感じる。まだこの会社の匂いに馴染んでいないし、まだまだ一員になれていない。当然だ。

これからうまく泳げずに、溺れ死ぬ可能性もある。これから起こることにワクワクしつつもあり、怖くもある。苦手なことも多いだろう。

でもここはきっぱりと、割り切ろうと思う。

仕事の自分とプライベートの自分のマインドを切り替え、割り切る。そしてできないことは伸び代と思う。がんばらず、平常心で向かう。

職場の人も、得意先の人も、みんな人なのだ。人間だ。賢い猿や念力を放つ岩が相手ではない。同じ人間なのだ。そう思うと気が楽になる。

格好つけようとせず、誠実でひたむきであろう。

丁寧で慎重で、けれども確信をもつように行動しよう。

私は自分自身になにも、難しいことは要求しないでおこう。

 

まずは目の前のやるべきことを、噛み砕きながら、栄養にしながら、着実に進めていきたい。

スタートラインに立ったばかりなら、前に進むしか道はないのだ。