妻が友人の結婚式に参加していたため、この土日は私一人で過ごした。
土曜日は昼間から酒を飲んで小説を読んでブログ書いて寝て、映画見てグダグダ過ごし、日曜日は早起きしてやはりグダグダ過ごした。
夕方ごろに妻からLINEで夕飯は外で食べてくる、と言われたので、それじゃあ私も好きにさせてもらおうと思い、とりあえずスーパーへ行った。
黒毛和牛の赤身が1000円にまで値引きされていたので迷わず買う。1000円で外食するよりか、1000円で家で肉を食べた方が安いと最近気づいた。外でステーキを食べたらそれこそ2000円くらい全然超える。それなら家で肉を焼いたほうが安い。
サバの切り身と鶏もも肉を作り置き用に買って、あとは少々の野菜とキノコなどを買った。ビールも忘れない。
サバは味噌煮にして明日のおかずに、鶏ももは冷蔵庫にあったジャガイモと玉ねぎとで蒸し焼きにして、肉じゃがのようなものを作った。これも平日に食べる。水曜日くらいまではもつだろう。
それらを作っている間、牛肉にフォークでザクザクと穴をあけて繊維を断ち、下ごしらえを施した。これをやっておかないと市販の肉は軟らかくならないので、なによりも大事な作業だ。
こうして肉に穴をあけていると、思っていたよりも手ごたえが無いことに毎度驚かされる。目を瞑ったら、フォークが肉に刺さっているのかよくわからないだろう。
殺人事件なんかでよくある、被害者をナイフでめった刺しにするケースはこの「手ごたえの無さ」が原因だと聞いたことがある。刺しても刺してもナイフはあまりにも呆気なく肉を貫くので、その手に感触が残らないというのだ。だから命を絶ったのか確信が持てず、犯人は何度も刺してしまう。全身を50か所以上刺した、なんてニュースを聞くとなんて凶悪で怨念の強い犯人かと思うかもしれないが、じつはそういった「手ごたえのなさ」が幾度にもわたる刺傷を生み出させているのだ。でも、それだけ何度も刺すことには「確実に殺そうとする意志」が認められるので、いずれにせよ殺意は強いと言えるだろう。
なんてことをステーキ肉に穴を開けながら思う。食欲失くすわ。
ジャガイモが1個残っているので、これはつけ合わせにマッシュポテトにする。マッシュポテトにすると良いのは、皿に盛ったときにジャガイモ一個分よりもなぜか体積が増えるので豪華っぽくなるという点にある。あと美味い。
細かく刻んでから軟らかくなるまで茹でて、水気を切ってからフォークで潰し、バターと牛乳と一緒に電子レンジで1分ほど温める。適度に塩と胡椒を振ったら完成だ。手間っぽいけど簡単すぎるし美味しいので付け合わせにはぴったりだ。
ステーキソースは玉ねぎをすりおろしてニンニク、酢、酒、砂糖と合せて醤油ベースに作る。これを小さいフライパンで煮つつ、ステーキ肉を焼いた。
結局、サバの味噌煮、肉じゃがみたいなもの、マッシュポテト、ステーキソース、ステーキで合わせて2時間くらい料理をした。なかなかの労働だったが、すっきりした気持ちだった。料理のいいところはかならず成果物ができるということと、未来の自分へのギフトになるということだ。
ひとつひとつの作業を紡ぎ合わせ、効率よく洗い物をし、ほかほかの料理ができる頃にはほとんど洗い物を残さないでおけたらかなり上出来。今日はそれができたので清々しい達成感を味わえた。
さて食べるぞ、というときになって、妻が帰ってきた。
「あ、わたしに内緒でそういうことするのね。フーン」
仕方なくポテトと肉を分けてやる。
「家で食べればよかった」
肉はうまく焼けてソースの兼ね合いも抜群だったし、マッシュポテトも天才的だった。料理は楽しいな。自己肯定感が上がる。いい日曜日の夜になった。
あとはコスタリカに勝てれば最高だったのだが……。