蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

ヨドちゃんは海底へ、おれは会社へ

いクジラのヨドちゃん(淀ちゃん)がこの度、太平洋沖合へ「返還」されることになったという。

私は以前に田島木綿子さんの『海獣学者、クジラを解剖する』を読んでいたので、今回のヨドちゃんも和歌山かどこかの砂浜に埋葬されて、数年後に骨格標本となって研究に役立てられるんだろうなと思っていたが、まさか太平洋に沈めるとは思わなかった。

f:id:arimeiro:20230120203934j:image

解剖して死因を研究したり、骨格標本の数を揃えることで海洋学の研究が進むので、あの可哀想なヨドちゃんのためにぜひとも研究として役立ててほしかったのだが、残念だ。

感情論で「骨格標本にするのは可哀想だ」と言うのは間違ってる。

可哀想にひとりぽっちで、あんなよくわからない湾で人目に晒されながら死んでしまったヨドちゃんが標本になって研究材料として永遠に存在し続けるほうが、よっぽどヨドちゃんにとってもよかったんじゃないか、と、私も感情論で言ってみる。

どうせ来週にはみんなヨドちゃんのことを忘れてるくせに。

まぁでも、それ以外にもいろいろと事情はあったのだろうし、こうなったらどうか無事に海の底で静かに眠りに入ってほしいものだ。作業員や研究員の皆さんも無事に海葬を終えてほしい。

 

ヨドちゃんが海の底へ還るころ、おれちゃんは会社へ向かっていた。

だんだん仕事がキツくなってきている。とにかくやることが多いし、これからやることを考えると、吐き気がしてくる。

だから目の前にあることをとりあえず片付けていってる。

ふと、海の底でゆっくり時間をかけて骨になっていくヨドちゃんが脳裏によぎる。

自分もあるいは、ヨドちゃんと同じなのかもしれない。