職場の近くにいわゆる二郎系のラーメン屋さんがあって、たまーに気が向いたら、そこで昼を食べることがある。
最初食べたときは、なんか、若者の食いもんだな、と思って、まぁ次はないかな、なんて評価を下したものだった。
しかし、しばらく日が空くと「たまにはいいか」なんて思えてきて、また来店しては「次はもういいかな」と思う、その繰り返しだった。
野菜マシが私の定番だ。
確かに糖質と脂質の塊で悪魔の臓物みたいな食べ物だけど、野菜(モヤシとキャベツですね)をたくさん食べることでちょっとは罪悪感を消化できそうな気がするし、こういったビタミン類は脂質と摂ると吸収率が上がるのでいいと聞いたこともあり、野菜はマストで増すことにしている。
トッピングの玉ねぎも無料なのでつける。にんにくよりも匂いが少なく、食欲増進になる。どろっとした脂の浮かぶスープにキレのいい香りが加わわってちょうど良いんだこれが。
脂も増す。
健康に悪いじゃないか、と批判の声を内心に受けながらも、しかしながら、異次元の決断力で、私はここに脂を増すことを宣言する。
美味いから。
美味しさとは、脂のことだから。
美味しさには、なにも勝てないから。
店内は狭くて小汚いけど、店主は優しいし、カウンターの払拭はセルフでやるルールもあるので客同士の思いやりも見られ、不思議と居心地がいい。
店の隅っこのテレビを振り向きながら見ているサラリーマンのおじさん。唸りを上げる換気扇。一心不乱に麺を啜る学生。
なんかこの店の光景のすべてに温かみがある。みんなここの美味しさに惹かれてここにいるのだ。
同志、と思う。
感謝、と思う。
はっきり言おう。
めちゃくちゃハマってしまった。
冒頭の「まぁ次はないかな」というのは格好をつけるための嘘だ。
次どころか、リピートアフターミー状態。毎週行ってる。
毎週行くのは健康上良くないと思い、年明けから2週間に一度としている。本当ならば3日に一回は行きたい。
めちゃくちゃ美味しい。なんだこの中毒性は。
味も濃いし、脂っぽいし、麺はゴワゴワしていて顎が疲れるし、野菜はどっさり乗ってて食べにくいことこの上ない。
そのすべてが愛おしい。
ひとつひとつの要素は健康の観点からして明らかな危険性を帯びているのだが、すべてがひとつの丼に収まると、見事に調和して歯車が噛み合い、どうしようもなく危険で中毒性のあるラーメンと化すのだから恐ろしい。
怖い。
私は二郎系ラーメンが怖い。
怖いから話すのをやめてくれ。
怖い怖い。
量もいっぱいあるから食べ終わるとけっこう苦しくなってしまうのだけれども、もしその場で即座に空腹になれるなら、もう一杯食べたいと思ってる。
あのモヤシが好きだ。好きです。好きだね。
スープの塩気と脂が絡んで、モヤシの水気に中和されてなんとも言えない絶妙さになる。あのモヤシと脂だけずっと食べてたいかも。食べながら常に消化し続けて、永久機関になりたいかも。
それが将来の夢。モヤシの永久機関。
卵黄が乗ってて、それもいい仕事してる。まろやかさを演出して、悪魔的なラーメンに一縷の優しさを与えてくれるんだよな。
あ〜書いてたらまた震えてきた。中毒症状だ。
でも、食べ過ぎるのはどう考えても、どんな食べ物だってよくない。酒だって飲みすぎれば毒になる。ケーキだって食べ過ぎれば毒になる。
この中毒性と折り合いをつけながら、日々の小さな楽しみとしたいと思う。