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桃太郎は「きびだんご」をステマしているのか?

テマ。ステルスマーケティング

SNSをはじめとしたインターネットで広告主がそれが広告であることを隠して宣伝すること。海外ではアンダーカバーマーケティングとも言われ、規制対象となるほど、問題となっている。

それを踏まえて『桃太郎』を思い出してみると、突如として登場する「きびだんご」には不信を感じざるを得ない。

「提供:きびだんご協会」なんて文言が物語の初めにでも入っていれば、お、広告なんだな、と思えるけど、実際にはなんの説明もなくしれっと登場し、さながら貨幣同然のような道具立てで作中では受け入れられている。

私は幼いころから、この「きびだんご」に違和感を抱いていた。

きびだんご?なにそれ?状態である。

ふつうのおだんごならわかるけど、きびだんごってなに?

現代では「きびだんご」は、あまりにも一般的ではない。と言うと語弊があるけれど、果たしてちゃんと食べたことのある人はどれくらいいるのだろう?

東京都品川区の街中で百人にアンケートを取ったところ、「きびだんごを食べたことがある」に票を入れたのはわずか3人であった、なんてデータがあってもおかしくない。それくらい人口に膾炙(かいしゃ)していない。『桃太郎』に出てくる道具の「名前」として知られてはいても、実体は知られないまま名前だけが独り歩きしている。

それなのにさも当然のように作中に出てくるのだから驚きだ。

「みんなきびだんご当然知ってますよね?」ってかんじで、何の説明もなくすすんでいくから怖い。桃太郎エピソード0もしかしてあったかんじ?知らないのおれだけ?ってなる。

「きびだんご」が岡山県の名菓で、桃太郎も岡山県にゆかりがあるのは、これが本当にステマ案件だったら動かぬ証拠として取り沙汰されることになる。いくらなんでも「偶然」で片付けるには出来すぎている。

『桃太郎』は「きびだんご」をステマしているのではないか?

”闇”があるのではないか?

 

これを調査するにはそもそも『桃太郎』に「きびだんご」が登場するのはいつからなのかを辿らねばならない。が、あいにく古典を遡って比較研究する暇はないので(一次資料は専門家に任せておけばいい)、インターネットで簡単に調べてみた。

 

桃太郎伝説は全国各地にあって、地域によっては御伴が変わったり桃太郎の生まれ方に差異があるようだ。『桃太郎』の起源は遠くシルクロードにまで及び定かではないが、全国各地に存在した物語が標準化されたのは江戸時代ごろだという。

一方、岡山県の名菓である「きびだんご」は岡山の古名である「吉備国」と関連があることはひと目でわかる。

名づけに関して諸説あって、まず「きびだんご」はそもそも「黍団子」であって「きび」とは「黍(きび)」、すなわち材料をさしているとする説である。吉備でつくられたから「きびだんご」なのではなく、黍でつくられたから「きびだんご」なのだ。

それでややこしいのが、かなり昔に「吉備の国だからきびだんごと関係もっちゃえばいいじゃん」という動きがあったことだ。ダジャレなんだけど、特産品とかお土産ってそういう言葉遊びがありがちで、「きびだんご」と吉備国も同じようなかんじでゆかりをもったものと考えられる。

あるいはもう一説として、吉備国の何某かが、吉備と黍を結び付けて開発したのが「きびだんご」とされる説だ。いずれにせよ「きびだんご」と岡山県の結びつきの発祥はダジャレであったことには変わりなく、古くから岡山県では「きびだんご」が広まっていたという事実があった。

「きびだんご」が岡山から全国へ広まったのは、明治24年以降に岡山を通る兵士たちが「桃太郎のきびだんごは縁起が良い」といって方々に持ち帰ったことに由来しているらしい。

『桃太郎』は江戸時代ごろに標準化されて広まり、そのときに広まったものに「きびだんご」要素があったのかはわからないのだが(私が調べていないから知らない)、勧善懲悪ものである物語の骨子は変わらなかったと考えられる。

とすると、兵士にとって戦いと勝利を象徴する『桃太郎』に登場する「きびだんご」が縁起物として受け入れられたのは納得できる。

桃太郎伝説が各地にあった状態で、岡山版『桃太郎』では古くから特産品として親しまれ身近な存在だった「きびだんご」が登場するのも無理のない話だ。

以上のことから総合して考えると、明治時代の兵士によって「きびだんご」の普及と、その縁起を説明するための岡山版『桃太郎』が同時に広まったものと考えられやしないだろうか。

流れをまとめると下記のようになる。

 

①岡山名物きびだんごがあった

  ↓

②岡山版桃太郎伝説には最初からきびだんごが登場していた

  ↓

③明治の兵士が「きびだんご」と共に岡山版『桃太郎』を広めてしまった

  ↓

④現代の何も知らない私が『桃太郎』は「きびだんご」をステマしていると疑念を抱く

 

こうなると、ステマかどうかは疑わしい。

岡山における「きびだんご」がオニギリくらい一般的なものだとしたら、作中に出てくるのも無理のない話だし、全国に広まってしまって結果として宣伝効果を生んでしまったのは不可抗力だったと言える。

 

しかし、江戸時代に標準化された『桃太郎』にすでに「きびだんご」要素があったとして、それで明治の兵士たちが「これがきびだんごか。縁起いいな。広めたろ」としていたのだとすれば、江戸時代の段階でステマ認定をしなければならない。

でもそれは考えにくい。なぜなら「きびだんご」が全国的に知られるようになったのは明治の兵士によるものであり、それ以前に桃太郎によって「きびだんご」を全国に知られていたとすれば、わざわざ「明治の兵士によって広まった」なんて書き方はしないはずだからだ。「桃太郎によって全国に広まった」と書いてしかるべきではなかろうか?

 

よって、私の結論としては、

「桃太郎はきびだんごをステマしていない。不可抗力だった」としたい。

今後時代の流れの中で「きびだんご」に代わって桃太郎が携えるものはなんだろう?

完全メシかな。

 

 

インターネットで15分くらい調べただけで、ぜんぜん読み込んだりもしていないので、この情報はまったく信じないでおいていただきたい単なる素人の妄言に近いというのと、気になる人はちゃんと自分で調べたりしてください。

 

参考文献

ja.wikipedia.org

www.westjr.co.jp

www.namisato.co.jp