最近はカティサークを飲んでる。
村上春樹の小説によく出てくるし、とびきり安いのに、それなりに美味しいからだ。
ウイスキーは高い。
なんで高いのかはわからないけど、高くてもしょうがないな、という味はする。つまり複雑で、哲学的で、一概には言えない、ということだ。
近頃はウイスキーにハマってよく飲んでいる。
でも高いのには手を出せないので、それなりに安価なものばかりだ。
毎晩、シングルかダブルで、眠る前に一杯。ウイスキーだけを飲むときもあれば、ひと口チョコレートをつまむときもある。苦いチョコレートの風味がウィスキーのスモーキーな香ばしさにマッチする。
ウイスキーを飲んでみると、その美味しくなさにまずびっくりする。
なんだかトロリとした液体で、メイプルシロップみたいな色をしているから、ほのかに甘いような想像をするのだが、その実態は純粋なアルコール飲料で、口に含んだときから揮発性の熱さを孕んでいて、なんだかちょっとした毒のようにも思える。
でも飲み進めていくうちに、その幾何学模様のような魅力がわかってくる。
ウイスキーはため息の飲み物なのだろう。
時間をかけて飲むもので、時間の流れの緩やかさとその悍ましいほどのはやさを楽しむための飲み物だ。
そこには諦めと尊さがある。
夜の静かさに染み渡るような味わいだ。
口に含み、アルコールの鼻に抜けてくる香りと舌触りを味わうと、その飲み物そのものが、夜を凝縮したような味わいに思える。
そのひとときに、一日の自分を労る気持ちが芽生えてくるのである。
ウィスキーを飲んでいる自分が好きだ。
労りの飲み物。