蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

人が増えている

母との会食があり、妻の挨拶も兼ねて丸の内でランチをしてきた。

ほんの数ヶ月前まで東京の街は休日でも人が少なかったのに、今日になってどこからともなく息を潜めていた人々が湧き出てきていたようで、丸の内も混雑していた。

新生活が始まることで、上京してきて、家族と東京観光をして最後の週末を過ごす人もいるようだ。ビルディングを見回し、東京の地名にいちいち指をさして感激していた。

外国人観光客もここ数年では最も多く見受けられた。相変わらず、山手線の狭いシートに巨軀を縮めて収まる姿は滑稽である。

 

会食後、丸の内のKITTEに入っている無料の博物館IMTにも行ってみた。

鯨の全身骨格や、キリンの全身骨格、ミイラの棺、鳥の標本多数、鉱石標本、映写機、などなど、かなり見応えのある展示だ。

これが無料で、しかも丸の内で、というのが驚きである。

動物の骨をまじまじ見つめたことはこれまでなかったのだが、よく見てみると骨なりにさまざまな発見がある。

哺乳類の骨はどれもがっしりしていて、たとえばイルカの骨と魚類の骨を比べれば、魚がイルカに勝てるわけがないと一目でわかる。コウモリの骨は細く小さくて、飛ぶために軽量化されたことがうかがえる。カエルの骨は、骨の状態でもカエルとわかるデザインをしていて、これを考えた人のセンスには脱帽するばかりだ。

博物館内も人がそれなりにいるが、鑑賞にあたって支障になるレベルではなく、穴場とも言っていいだろう。

私も妻を連れて動物の骨を見ていたので他人のことは言えないが、こういうところで骨を見ているカップルは、いったい何なのだろうと思う。

別にいいのだけど、わざわざ骨を見にくるものだろうか。ある程度、付き合う年数も長くなった気心の知れた仲にならないと、フラッと骨を見にいくかとはならない気がする。

 

そのあとは八重洲地下の「みはし」であんみつを食べて帰った。

八重洲地下街は悪玉コレステロールの浮かんだ血管内みたいに人でごった返していた。

とくに「ちいかわショップ」の周囲の混み具合はえげつなかった。人をコレステロールとするならば、ちいかわショップのところは「血栓」である。ちいさくてかわいい生き物に群がる、ちいさくもかわいくもない人々。

八重洲地下にはキャラクターショップが多く、一大お土産街になっているので、コロナ前もこんなふうに混雑していたことを思い出した。

人の混み具合から、コロナが形式上は終わりを迎えつつあることが見て取れる。

あとはマスクだけなのかもしれない。

それでいいのかは、果たしてわからない。