蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

挫・椅子

が家の座椅子は2人掛けの幅広で、リクライニングすれば小学生が楽に眠れるベッドにもなるくらいの大きさがある。用途に応じて角度を調整できて重宝している。

でも色の選択をミスったな、という思いが日々募り、あまり愛着が湧かない。

木目調のインテリアに合わせてベージュを選んだが、かえって部屋の色調が暗くなってしまったので、グリーンやブルーにすべきだったと後悔している。

愛着が湧かないので、アイスをこぼしたり、チョコレートをコーティングしたり、ラーメンをぶちまけても「別に?」ってさして気にもせず、ただ座るための場所として ぞんざいに扱っていた。

背もたれに腰掛ける。背もたれのへりに横たわってバランスを取って遊ぶ。など、注意書きに記載されているであろう「禁忌」を犯してアクロバットに使用していた。

勢いよく腰掛けて背もたれをギシギシいわせていた。

 

それら誤った扱いが功を奏したのか、最近座椅子が壊れかけている。

私が定位置に腰掛けるたびに、リクライニングを司る機構部分から「ギギギギギ」と金属が捻じ曲がるような音がするのだ。

背もたれは角度を保てず、鈍角に曲がる。一定のところでリクライニングは止まるのだが、私の座る部分だけ やけに後ろに倒れてバランスが悪い。

幸い、まだまだ使用できるが、今後悪化しないとも限らない。少なくとも今後直るとは考えにくい。

まだ買って一年にも満たない。

「あなたの座り方が悪いんだよ。ばん!って思い切りもたれかかるから、いけないんだよ」

恋人は私を弾劾する。恋人の腰掛ける位置ははまったく壊れていない。

明らかに私のせいである。

「座り方が、とにかく、悪い。野蛮人のそれだよ。人の座り方じゃない。ひどい猫背だし」

こういった場合、恋人の声はイキイキとする。

 

これだけ弾劾されていてだが、まぁ、壊れたら仕方ないな、と思っている。

なぜなら愛着がないから。

むしろ壊れてくれた方が(いっそメチャクチャになってくれた方が)買い替える契機になるから、都合がいい。

次は手すりが木目調で、布はグリーンかデニム地がいい。座椅子じゃなくてソファにしよう。

それに合わせてローテーブルも買い替えてもいいかもしれない……。そう思っている。

 

 

悲しい話だ。

持ち主は、あとは徹底的に壊すだけだと企んでいるのだ。

次にソファを選ぶときは、もう少し腰を据えて考えよう、腰掛けなだけに。面白そうに口角を捻じ曲げて。