蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

読書

『魚服記』に出てくる「水無飴」とは何なのか

太宰治の『魚服記』はさらりと読み流してしまうには難しい、なかなか解釈の分かれる短編小説だ。 でもまぁ、とりあえずは一種の民話だと思えば良いのではないかとも思う。 まずはテキストをテキストのまま飲み込むというのが小説を楽しむ第一歩だし、テキス…

『将太の寿司』を読破したら妻の気が狂った

『将太の寿司』というマンガを、全国大会編と呼ばれるところまで読み終わった。 連載が終わったのがこの全国大会編で、このあと時間を空けてからWorld Stage編が始まる。しかしまぁ、World Stage編は一旦置いとこう。 このマンガはそのタイトルの通り、将太…

みんなの中にも芥川の「鼻」はある

芥川の小説を最近読み返してて、おもしれ〜と、結構思ってたりする。 現在芥川がいたとして、彼の小説がどれくらい評価されるのかははたしてわからない。なんかちょっと説教くさいところもあって、ウザいな、って気持ちもある。 なんでちょっと説教くさいの…

『今夜、すべてのバーで』を読んだ

さいきんは毎晩寝る前にウィスキーをダブルで一杯飲んでからベッドに潜り込んでいる。 そうするとなんとなく体が温まったような感じがするし、するりと眠りに入っていけて実に気持ちがいいのだ。 ところでウィスキーという飲み物は、いったい、不思議な酒だ…

セルゲームってなんだったんだ

※『ドラゴンボール』のネタバレを含み、また用語についてはほとんど解説なく進むので、わからない人は原作を読んでください。また、筆者はだいぶおぼろげな記憶でモノを言ってます。すみません。 *********** ドラゴンボールの人造人間編の最終決…

『神様家族』を読んだ

小5くらいのとき、ケーブルテレビのアニマックスで『神様家族』というアニメを放送していた。 神様の息子、神山佐間太郎が神様になるべく人間界で生活をするというギャグハートフルアニメだ。知ってる人はあまりいないだろう。 ライトノベルからアニメ化され…

西村賢太『誰もいない文学館』感想

西村賢太著『誰もいない文学館』を読んだ。 昨年の6月に発行された本、つまり氏が急逝されてからの刊行物ということになる。 西村さんの著作は一貫して私小説であり、そうでなければ「一私小説書きの日乗」をはじめとするエッセイが主たるものだ。この『誰…

岡田悠 著『1歳の君とバナナへ』を読んだ

今週のお題「最近おもしろかった本」 今年の6月に結婚して、結婚式は来年の5月にあって、それが済んだらとりあえず夫婦としての所定の儀式はひととおり完了するのだろう、と思っていて、病めるときも苦しいときもあるだろうけど二人はこれからも健やかに平…

ジョジョ第4部の作中舞台について/億泰大好き/成長がテーマ

ジョジョの第4部『ダイヤモンドは砕けない』を久々に読み返した。 第3部から続くスタンドバトルはさらに難易度を増し、戦いはより複雑になっていく。この特徴は部が進むごとにエスカレートしていくのでまぁ良いとして、4部の特徴はなんといっても「ひとつ…

『自由研究には向かない殺人』を読んだ

長い小説は苦手だ。 その理由は二つあって、私は読むのが遅いから読み終わるまでに長大な時間がかかり疲れるということと、読書のなにが好きかって「読み終わる瞬間」が好きなので、その最高の瞬間までにやはり時間を要して焦らされる気分になるということ。…

『パパイヤ・ママイヤ』を読んだ

乗代雄介さんの『パパイヤ・ママイヤ』を読んだ。 ひじょうにおもしろく読めた。 乗代さんは信頼している作家の一人で、これまで読んできたもので期待を裏切られたことはない。 更新頻度はあまり高くないけどずいぶん昔から はてなブログをやっているようで…

『わたしを空腹にしないほうがいい』/ハンバーグを焼く/救い

くどうれいん さんの『わたしを空腹にしないほうがいい』を読んだ。 休みの日に読むにはうってつけのエッセイ集だった。 くどうれいん さんの作品を読むのは『氷柱の声』以来で、その小説はかなり気に入ってる。2作目に読んだ今回のエッセイもだいぶ気に入…

蘇部健一『六枚のとんかつ』を読んだ

推理小説、ミステリーが最近好きだ。 先日綾辻行人の『十角館の殺人』を初めて読んでそのトリックの巧妙さに読みながら思わず「えっ」と声を出してしまった。そんなに多く小説を読んでないけど『十角館の殺人』は日本のミステリー小説史に残る傑作だと思った…

合唱曲「虹」の歌詞考察

恋人と中学生の頃にどの合唱曲を歌ったかで盛り上がった。 当時はみんなで歌うという行為も上滑りしたような歌詞も全部が嫌いだったけど、今あらためて聴いてみると良曲が多く、なによりも歌詞に沁みるものがあって二人でいくつも曲を聴いた。 合唱曲の歌詞…

最近読んだ漫画/その人にしか描けない線/面白い漫画もっと教えて

『僕のヒーローアカデミア』(通称ヒロアカ)を最近(今更)読みはじめて、めちゃくちゃ面白くてびっくりした。そりゃジャンプで人気なわけだ。 キャラがくっきりと自分で動いていて、どの子も愛着が湧いてくる設定とストーリーを持ち、学園モノとスーパーヒ…

おれ 、ちいかわ かもしれん

うすうす思っていたのだが、おれは「ちいかわ」かもしれない。 ✏️ pic.twitter.com/cfueOxxyCD — ちいかわちいかわ焼き (@ngnchiikawa) 2021年3月2日 「ちいかわ」とはクリエイターのナガノさんによりTwitterで連載されている漫画である。 なんか小さくてか…

柳田国男『禁忌習俗事典』を読んだ

『禁忌習俗事典』を本屋でたまたま見かけ、へぇ、オモロ、と思い内容も見ずに購入した。 「事典」と名のつく通り、事典である。系統ごとに分類された事柄が事例とともに説明され、列挙してある。索引も付いているが、文庫サイズだ。 「事典とはいえ、日本の…

新書はフィクションとして読めば面白い

新書。 なんかちょっと長細い感じの本。 表紙がなんだかみんな同じかんじの、内容が難しそうな、フィクションではない、本。 こんなかんじの本。 主にノンフィクション、評論、論説を扱っている。 鈴木大拙の『禅と日本文化』は大学生の頃読んだ岩波新書だが…

好きな小説 ──『十三月怪談』(川上 未映子)

ときどき思うのだ。恋人が死んだらどうしよう、と。 たとえば病院で恋人が死んでしまったら。 私は恋人の手が冷たくなるまで声をかけ続け、何度も愛してると伝え、頬に、おでこに、できればくちびるに、くちづけをするだろう。 灰になった恋人を夢遊病の気持…

0からトースターを作るような行為

よくわかんね~技術って多い。 これいつも使ってるけど、実際どうなってんのかよくわからないな、というもの。 どうやって作ったのかよくわからないもの。 ボールペンなんて100円もしないで買えるものもあるけど、我々素人が0から作ろうと思ったら一体いくら…

ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』を読み疲れる

ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』上下巻を購入したのは、たしか2018年の春だったようにおもう。あるいは夏だったかもしれない。 2018年は私にとって「卒論の一年」であり、その年は論文のテーマに選んだ村上春樹の書籍を片っ端から漁り読んでいたので、少な…

『キッチン』を読むということ

吉本ばなな『キッチン』を再読した。 これで読み返すのは3、4回目くらいだけど、何度読んでもいつ読んでも、またいずれ読みかえすのだろうなとどきどきして、期待にも似たたしかな予感を抱く、大好きな一冊だ。 少ない言葉で、最低限の、しかし最大限の描写…

『DEATH NOTE』をイッキ読みした

『DEATH NOTE』をイッキ読みした。 中学生くらいの頃に全話読んだのだが、10年前となれば記憶があいまいで結末しか覚えておらず、推理や駆け引き、つまりは頭脳戦といった作品の醍醐味の部分は忘れていたので、時間もあることだし、2日間に分けて一気呵成に…

『ハックルベリイ・フィンの冒険』を今こそ読むべきだ

『ハックルベリイ・フィンの冒険』でも読むか…… スッ…… あれ……? あっ!!! 中身が逃げてやがる!!! 文字通り「本体」が逃げてやがる!!! ※本体は川へ逃げていましたが、捕まえました。 さて、茶番はこのくらいにして、読みました、『ハックルベリイ・…

コンラッド『闇の奥』を(ちゃんと)再読

ずっと本屋に行けてない。 そもそも読書は通勤時間にすることが多いので、日ごろの読書量も減ってしまった。 さいきんは土日に貪るように本を一冊読むことが多くなった。 本棚にコンラッドの『闇の奥』があった。 大学1年生のとき、課題図書で購入したものだ…

『トム・ソーヤーの冒険』を読んで

恥ずかしながら、『トム・ソーヤーの冒険』を24年生きていて一度も読んだことがなかった。 (毛布にくるまれているトム・ソーヤーの冒険) 漠然と「塀にペンキを塗る話」とは知っていたけど、実際に読んでみたらペンキじゃなくて漆喰(しっくい)だったし、それ…

悪口の書き方

オフェイロンの『アイルランド 歴史と風土』という本を読んだ。 古本屋で出会った本だ。 私はアイルランドについてまったく興味がないし、アイルランドについて知っていることといえば19世紀のジャガイモ飢饉くらいで、あとは漠然とイメージするだけの荒涼と…

【ネタバレ有り】夏目漱石『こころ』は高校の国語で読むべきだろうか?

折に触れて、と言うけど、その「折り」ってなんだろう。寿司折りだろうか。 寿司折りだろうが菓子折りだろうがなんだっていいけど、ともかく私は折に触れて漱石の『こころ』を読むことにしている。 最初に読んだのは中学のときで、この頃は頭がよくなかった…

発達障害の妹について。『アルジャーノンに花束を』を読んだことについて。

実を言うと、私には妹が一人いて、彼女は生まれながらの自閉症である。 発達障害だ。 彼女とは年子なのだけど、はたして彼女が幼少の頃の記憶を、私は持っていない。記憶に彼女が出てくるのは、私が小学校に入って以降のことだ。それまで彼女は私の中に存在…

皆もう『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び(うず いもせやまおんなていきん たまむすび)』読んだ?

タイトル長っ。 過日の第161回直木賞を受賞した『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を読了した。 全編が関西弁によって語られているという情報を先に頭に入れていたので、やや不安はあった。 私のようなサザンサザンの湘南ボーイには関西弁は馴染みがなく、読みに…