蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

梅酒を漬ける、季節を生きる

っと迷っていたのだが、ついに漬けた、梅。

 

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ずっとやってみたかったのになぜ迷っていたのかというと、ひとつに「面倒くさそう」だったから。それに面倒くさいわりに成功するかちょっと微妙だったから。さらに「スーパーの買い出しついでじゃ荷物が重くなり大変そう」だから。ついでにひとつ付け加えると、梅って意外と高いから。もひとつオマケに「やり方がよくわからない」から。

 

やり方は情報が溢れすぎていてわからなくなっていた。

どのサイトでも「必ずこれはやっておけ」と明記されている部分がある。

瓶の消毒と、梅のヘタを取る。この二つは絶対にやった方が良いらしい。

それ以外の部分に関してはサイトによってまちまちで、瓶はガラス製とプラスティック製のどちらがいいか用途によって分かれ、あるサイトでは梅の灰汁抜きをすすめている一方で別のサイトでは灰汁抜きは不要としていたり、氷砂糖の種類にまで言及が及んでいたり、かたやただの砂糖で大丈夫だと豪語していたり、梅の種類や大きさの見分けなど考慮すべき点は多いのに、しかし意見がかなり分かれているのでまとまりがなく、結局初心者はどうすればいいのかわからなかった。

どのくらいの比率で漬ければいいのか、氷砂糖の裏面とホワイトリカーの解説と漬け瓶の説明書でもそれぞれ異なる。

この統一感の無さ、が、梅酒づくりの第一歩を阻んでいた。

私は何をどうすればいいのだろう。

 

一歩を踏み出せたのは、たまたま八百屋で見かけた梅に魅せられたからだ。

八百屋に小さめだが梅一キロが300円で売られていたのだ。スーパーだと1000円乃至はそれに準ずる価格の梅が、七割引きの価格である。

なぜ?

見た目にも傷はなく、小ぶりなのが気になるが、青々として瑞々しい。青いのが果たしていいことなのかわからないが、黄色く熟れているよりかいいはずだ。

袋越しにも胸を抜けるような涼しく甘い梅の香りがして、つい梅酒を漬ける生活に思いを馳せ、目が宙を彷徨う。逡巡し売り場をウロウロしながらも梅以外は目に入らない。右往左往して何度も見に行く。これから起こるであろう面倒ごとが脳裏をかける。だが梅酒を漬けたらきっと豊かな人生になるだろうな、でも面倒だな、失敗したら嫌だな、成功したら嬉しいな……。

「買えばいいじゃん」と彼女が言う。

「買いなよ」と彼女が言う。

「ぜひ買うべきだよ」

 

 

その足で瓶とホワイトリカーと氷砂糖を買った。

 

 

プラスティック容器(瓶)を熱湯で消毒して、一晩乾かす。

明くる日、梅を仕込む。

梅のヘタを取るのは面倒な仕事だが、串でぽろりと取れるのがすこし快感で、ヘタがこんな風に取れるなんて知らなかったもんだから、意外でおもしろかった。

知らないことはたくさんある。

洗った梅をキッチンペーパーで拭いて新聞紙の上に並べ乾かす。たぶん乾かした方が良い。濡れていてよかったことなんてあまりないのだから。

並べると美しくて、青くて丸くて可愛い。

光があたる。季節の光だ。少しく風が吹いている。

 

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ここまでの工程は、さんざん調べて頭に入っているさまざまな梅酒づくりの工程から抽出した自己解釈でおこなった。なんかもうどうでもよくなっていた。なんとかなるだろう、その勢いだけでやっている。

よって、漬ける分量もテキトーだ。

梅をすべて入れ、氷砂糖をすべて入れ、ホワイトリカーをすべて入れた。

どうにでもなる。

 

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ひとまず漬け込まれた梅酒は季節を密閉したようで、見た目にも可愛らしい。ここに季節と期待が漬け込まれているのだ。氷砂糖と共に。未来への贈り物なんだ。

 

やってみないとわからないことは多い。

梅のヘタ、焼酎に溶ける氷砂糖のゆらめき、梅の香り、梅の肌触り。

もちろん成功して飲めたらいちばんいいのだけど、失敗してもいいとすら思ってる。

 

やってみないとわからないことは多い。

私は梅酒を飲みたいのではなく、梅を漬けてみたかったのだし、季節をちゃんと感じたかったのだ。

 

秋が楽しみだ。