チッタルーヤ!
(※【チッタルーヤ】とは、「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」のすべてに対応した新しい挨拶。今考えた)
本日のブログは、私がこれまでTwitterで投稿してきた140字小説で、多くの方から称賛をいただいた作品を、また自分で気に入っている作品を、10作品、まとめた記事になります。
あとがきではないけど、感想を書いておきます。
Twitterのフォロワーさんも、初めて読む方も、のんびりお楽しみください。
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それでは、どうぞ。
1.
#呟怖
— 蟻迷路 (@arimeiro) July 26, 2018
ドアをノックして中に入ったが、夫は書斎の椅子にキョトンと座るばかりで何も反応しない。
虚ろな目で瞬きもしないから死んでいるのかと急ぎ首に触れてみたら、確かに脈はあった。
夫は私の触れた部分にゆっくり触れて、静かに涙を流した。
変な人。
私は壁を抜けて書斎を後にした。#幽霊の日
幽霊の日、という企画で書いたもの。
オチまで読んだ後にもう一度最初から読むと、違う読み方ができる。
悲しくてどこか温かい、とても気に入ってる作品。
2.
ラムネのビー玉がどうしても欲しくて、当時は蓋を開けて取ることができなかったから、仕方なく叩きつけて瓶を割ってたんだよ、まじ危ないんだけど。
— 蟻迷路 (@arimeiro) August 7, 2018
でもさ、無理矢理取り出したビー玉って瓶の中にあったものとは別物なんだよな。
あれはさ、結局、取り出せないから美しかったんだな。#140字小説
はじめて100いいねを超えた嬉しい作品。
でも異色の作品で、起承転結がなっていないので、個人的には納得していないけど、記念碑的な作品ではあるのだ。好むと好まざるとにかかわらず。
3.
学生寮にいた頃、いつも飴を舐めてる男がいた。
— 蟻迷路 (@arimeiro) September 10, 2018
糖尿になるんじゃねぇのなんて噂してたら本当になっちゃって、それからすぐ死んだ。とっくに末期だった。
彼の母親は彼が高校生の頃に亡くなっていて、父親は身辺整理に来なかったから、僕たちで部屋を片付けた。
大量のミルキーが散乱した部屋を。
『ママの味』というタイトルの作品。
自分で書いておいてなんだけど、何回読んでも泣きそうになる。
彼がどういうつもりでミルキーを舐め続けていたのか考えると……。
4.
太陽は喜びでできている。
— 蟻迷路 (@arimeiro) October 17, 2018
空は若さでできている。
雲は知識でできていて、風は笑い声、地は優しさ、蒼は幸せ、炎は情でできているのだ。
神父様はそう仰った。
「地球で最も広大で深い海は、何でできているのでしょうか」
私の質問に、神父様は間をおいて、そして低く静かな声で言った。
涙だ。
『この星のすべて』という作品。
深いね。海のように。
5.
#詩人の本懐 曖昧
— 蟻迷路 (@arimeiro) June 23, 2018
マカロニを茹でていると実に多くの物事を考える。
宇宙のことから破れた靴下、もちろん、君のことも考えないわけがない。くだらないけど、宇宙とは君のことに他ならないからだ。
そうして出来上がったのが茹ですぎたマカロニで、僕は曖昧模糊な味わいを噛みしめて腹を満たす。
詩人の本懐、というタグがあって、この日のテーマは「曖昧」だった。
駅のホームで書いたことを覚えている。
まだ140字小説を始めたばかりの頃で、20くらいのいいねがついて嬉しかった。
説明していない感じが気に入っている。感じろ。
6.
「私は12歳です。病気で8年ベッドで過ごし、友達はインコしかいません。いろんな人に会って、友達がほしかった……。
— 蟻迷路 (@arimeiro) January 6, 2019
だから、
私が死んだら、インコを放すように頼みました。そのインコに、私の夢を託すんです」
うちのベランダにいた見知らぬインコはそう呟くと、羽を広げ、南へ飛び立っていった。
『鳥になって』という作品。
昔、探偵ナイトスクープという番組で、飼い主不明のインコが不気味な言葉を呟くので怖い、飼い主を探してくれ、という依頼があった。それに着想を得た。
綺麗にまとまった作品だと思う。
7.
「平成が終わったら頑張ろう」彼は言った。
— 蟻迷路 (@arimeiro) November 24, 2018
本当は今から頑張らなきゃいけないと判っていても酔わずにいられない僕らは、平成の寵児。
頑張れないのも、心から泣くことができないのも、時代のせいさ。
半年ある。大丈夫……
彼は2019年4月、平成と共に消えた。
僕はどう泣いたらいいか判らなかった。
『犠牲者』という作品。
平成ってどんな時代だろう、そこに生きる人々は、特に若者は……って考えていたころ、徳本和広さんという方の「平成の終わりに」という曲に出会って、着想を得た。
徳本さんにも読んでいただいて、コメントまでいただいて、感慨深い作品です。
良い歌なのでぜひ聴いてください。平成の終わりに、響く。
8.
「花が枯れたとき、私はもうここにいないのかな」彼女は言った。
— 蟻迷路 (@arimeiro) November 6, 2018
お見舞いに花を持っていくんじゃなかった。花瓶に挿した色が彩度を喪っていく。
だからこそ、
僕は色彩を絶やさないように花を増やしていった。
毎日毎日毎日毎日。
数日後「退院です」医師が言った。
最初の花が枯れた日のことだった。
『花は咲く』という作品。
サークルの合宿の帰りに書いた。「花は咲く」という曲を練習していたので、タイトルから連想して。
伏線がキマってるね。
9.
夏のはじめのプールに横たわると、夏の終りの匂いがした。
— 蟻迷路 (@arimeiro) July 9, 2018
草花を押し分けて虫の声が響く。耳を澄ませると遠くに君がいて、目を開けると水面に君の幻が映ってた。
涙がプールに融けていった。
少し笑った。それが美しくて。
夏のはじめのプールに横たわると、夏の終りの匂いがした。#アトリエ部 pic.twitter.com/nIYbC3GlgC
これは全然いいねが貰えなかったのだけど、詩的で気に入っている。
ちょうど箱根の彫刻の森美術館を訪れたときに書いたもので、「読む美術館」というシリーズで書いてみたのだ。
このシリーズはなかなか不評だった。
完成された作品(彫刻)に作品(140字小説)を重ねるのは野暮だったのだ。
でも気に入っている。
10.
「3組のあいつ、自殺したらしい」
— 蟻迷路 (@arimeiro) March 16, 2019
その話を聞いて、なぜ自殺したのかピンとこなかった。だって、
いじめられてなかったし、悪口言われてなかったし、好かれても嫌われてもなかったし、多分……あいつって……名前何だろう?あいつって誰……?
誰も「あいつ」を知らなかった。
だから死んだのだ。
『親だけは泣いていた』という作品。最後に胸糞の悪いものを。
でも、考えさせられるね。気に入っている。
いかがだったでしょうか?
書き手の癖で、つい登場人物を殺害してしまうのだけど、死んでもらうときには「ごめんね……」って悲しい気持ちでひと思いに殺す。できるだけ死なない方向で考えるのだけど、死ぬときは死ぬ。悲しい。でも、あなたの命のおかげでいい作品になるんだよ……そう思って、殺す。
こう書くとサイコパスみたいだ。
こちらは私のTwitterアカウントです。よかったら覗いてみてください。
ありがとうございました。