先日沖縄に旅行してきて、けっこう楽しんだので思い出をブログに書こうしたのだが、いざ書こうとすると「思い出は自分だけのものにしたいな」と少し思うところがあって(実際はすべて書くのが面倒なだけだった)、書くのをやめた。
でもまったく書かないというのも、ブログやTwitterを停止していた期間私の浮上を心待ちにしていた皆さんに悪いかなと心優しい私は思い、ということであれば旅行であった出来事のちょいネタ、つまり番外編をちょっと書こうかな、と案が浮かんだ次第でありますから、押しつけがましい善意でもってやっていきたい所存であります。やるであります。
1日目 天気 曇り時々雨
なんと、沖縄に滞在していた3割が雨、6割が曇り、1割が晴れであった。ちょうど沖縄に上陸した日から天候が崩れ、東京に帰るとむちゃくちゃ晴れたっぽい。すごい歓迎の仕方だね。悲シーサー。
でもまぁ、土砂降りの雨ではなかったし、ほとんど車移動だったのでそんなに問題はなかった。ただ、晴れていたらもっと景色が綺麗だったんだろうなぁと残念に思うのである。
そう、レンタカーでほとんど移動し、4日間すべて私が運転した。運転があまり得意でない私は不安だった。なぜなら、沖縄は右側通行だからだ。
「沖縄って右側通行なんだよ。不安なんだよね」出発前に私は同行者(恋人)に相談した。
「え、うそぉ。なんで?」
「ほら、アメリカに占領されてたでしょ。支配されてたでしょ。蹂躙されてたでしょ。小学生のとき中沢啓治の漫画で読まなかった?」
「いや、知らんし」
「呆れた。まったくけしからんね。今からでも遅くない。読むべきだ」
「うぜぇ」
「その名残で今も右側通行なんだよ。やべーよ。外国だよ」
「ほんとにぃ?」彼女はスマホで沖縄の交通事情を調べ始めた。
右側通行というだけで交通ルールは変わらないのだが、右と左で反転しているというのは勝手が違ってやりづらいだろう。1日で慣れるだろうか。
「1978年に左側通行になってるよ」
なんだ。
私の記憶は1978年以前で止まっていた。まだ生まれてないのに。恋人はさっそく味をしめて私を馬鹿にする。
「普通に考えれば左側通行ってことくらいわかるよね」「なんで記憶が1978年で止まっているのか」「頭がおかしいの?前から思ってたけど」「呆れた」「まったくけしからんね」
こういうときどうするか?私はふぇぇえええん(涙)って赤ちゃんのフリをすることに決めている。これはライフハックです。
というわけで、沖縄での運転は問題なく、せっかちな運転をする人もいなかったし道路も比較的広くて私の地元よりは空いていたので、とても運転しやすかった。
最初に首里城に行った。
THE・曇天☆
琉球魔王の城かな?
首里城に興味ないっていうか、琉球王朝の歴史なんてまったく興味ないし、再現工事して作った建物らしいし、それってよーするにまがい物でしょ、ぱぱっと見て次行くか、なんて考えてたんだけど、行ってみたらかなり良い名所で、もっとゆっくり史跡を見たかったしちゃんと展示物に目を通して勉強したかったし、建築も再現度がかなり高く見惚れてしまった。
戦火を耐え抜いた石垣や残された史跡が琉球王朝の絢爛を肌で感じさせてくれて、ちょっと袖を揺らした風にも「王朝の人々も同じ風に吹かれたのかな」なんてロマンティックに耽させる、そんな風情があった。城壁の一角一角にドラマがありそうで心地よいところだった。案内職員の方々も琉球の伝統衣装を着ていて良かった。
首里城の滞在予定を短くした自分を呪った。首里城を舐めていた。
私はすっかり魅了されてしまった。
城は琉球方言で「グスク」と読むのだが、自分に子どもが出来たら「城(ぐすく)」って名付けようと思うくらいには感動した。蟻迷路城(ありめいろ ぐすく)。可愛いね。
ただ、ひとつ不可解なことがあって、それは首里城のキャラクタなんだが……
なに?
初期の飛影なの?
これだけは不可解だし突然登場してきたのでびっくりして爆笑しちゃいました。中国人が私を不可解な目で見ていた。
そういえば、ちょうど旧正月だったため、中国人と韓国人が沖縄にはびこっていた。人気なんだね。
シーサー。
2日目 天気 雨
この日はちゃんとした雨が降っていて、ホテルから見える景色も重く、朝からテンション下がったけど、ホテルの朝食が美味しかったので良しとした。
朝食ビュッフェにめちゃくちゃ良いカラダをしたエッロい女がいて、スキニーのジーンズにニットでもう朝から色気ムンムンで、眼鏡だし、唇プルンとしてるし、なんだこの女、って目で追ってみたら角席の、目立たないテーブル席にその女性よりだいぶ年上と見受けられる太った男性と一緒にいて、仲睦まじそうに、けれど人目を気にしながら食事をしていて、なるほど、と思った。
不倫旅行だ。
男性は中小企業の社長で女性は秘書だ。
なるほどなぁ~……。
破廉恥だねぇ……。
ホテルの朝食ビュッフェには必ず不倫カップルがいる。そういうのをニヤニヤしながら見るのを私は人生の愉しみとしている。
朝食を食べ過ぎた後、車を運転して本島北部へ向かった。
運転中、私は「A/C」と書かれたボタンを押して機能停止させてみた。なんで押したのか忘れてしまったが、毎度のことながら大した理由もなくやったのだと思う。エアコンが気に食わなかったからとか、サーターアンダギーを食べ過ぎたからとか、そんなことで。
これが大失敗で、フロントガラスが徐々に曇っていき、5分もしたら完全にホワイト・アウトした。
「A/C」ボタンのせいだったのだけど、パニックに陥っていた私はなかなかそれに気付けず、窓を開ける、エアコンをガンガンにかけるなどしてうわああああああああ!!と叫びながらヨレヨレ運転していた。
この「A/C」ボタン、なにかというと、調べてもよくわからなかったので教えてほしいのだけど、なんか要するに冷房装置らしくて、これが起動していないと湿度の高い日(雨)には車内が曇りやすくなるらしい。
私はA/Cやらずに冷房を点けようと必死になり、なぜかぬるい風しか出てこなくて余計に窓が曇ってホワイト・アウトを増長させていた。
しばらくしてから、あ、さっき押したボタンが原因じゃね、とA/Cを起動したらドンピシャで、呆気なく曇りは晴れた。
やっちゃったね日産♪などと揶揄している場合ではなく、まじ、ゴーンって衝突してめちゃくちゃになるところだったから笑えない。車に乗ルノー止めよっかなってレベルだ。。。
やれやれ。……また事故ですか?
パニックに陥り道を誤りまくったため大幅な時間のロスとなった。車線の真ん中を走ってたし、めちゃめちゃだったと思う。沖縄の方々にはご迷惑をおかけした。とんでもねー観光客だ。
こういうとき、私は落ち込みやすい。
でも落ち込みたくはない。
どうするかというと、自分を中国人観光客、または韓国人観光客だと思い込むことにしている。
「アニョハセヨ~。道間違えちゃったニダ。サランヘヨ~。なんくるないニダ」
「你好。ヤンバルクイナかわいいアル。ウォーアイニー。なんくるないアル」
そう思い込めば、たとえ(心の中の)地元住民から非難されても「jhgdぶ!!なwmggbygjい!hhtfxyぐぃあえ?djms!!zbんw!」とエセ朝鮮語・中国語で強めに反論することができ、強い心を保てる。こちとら日本人じゃないからアンタ何言ッテルカワカラナイネ!
困ったときは中国人になりきって状況を理解できていないふりをすると良い。これはライフハックです。
屑迷路なところを見せてしまったが、2日目はおおよそこんなかんじであった。
3日目 天気 晴れ時々曇り
シーサーを作った。
かなり力作だし、めちゃくちゃ可愛く作れて大満足なんだけど、思いの外マヌケな顔になってしまって、しかもマヌケ加減が自分そっくりで、少し居心地が悪い。しかし、恋人が作ったものもなんだか本人に似ていて、笑ってしまった。
なぜかはわからないが、シーサーは作り手に似るみたいだ。そういえば仏像や能面も制作者に似ると言うし、不思議だ。自分で自分の顔は見えないのにね。
恋人の作ったシーサーを見てもわかるように、彼女本人は美人だし、私も相当なイケメンである。街で歩いていたら目立って仕方ないので困っている。
関係ない話だが、私は嘘をつくことを得意としている。趣味は小説を書くことだ。
その後、万座毛(まんざもう)というところに行った。
そこに、よくわからない4足歩行の生き物がいて、びっくりした。
一瞬こいつかと思ったが、よく見ると……
犬だった。
野良犬だった。シーズーとコーギーを混ぜたみたいなよくわからない野良で、草むらで根を齧ったり虫を食べていたりして、見てるこっちが悲しくなった。なんで沖縄で悲しい野良犬を見なきゃならんのだ。
犬が好きなので遣る瀬無い気持ちになった。車通りが多くて危険だし、そうやって危険にさらされているのが幸せなわけがない。お土産売り場のおばちゃんたちに可愛がられているだろうか?わからない。この子は我々が去るまで草むらでじっとしていた。
4日目 天気 曇り
いよいよ帰る日になった。この日は朝から帰ることを考えて憂鬱で、国際通りのシーサーを見てもテンションが下がるばかり。
そういえば沖縄は地名が難読で、カーナビに住所を入れようにも読み方が分からず苦戦した。たとえば
金城
これなんて読むでしょうか。
正解は「かなぐすく」。
第2問
金武
わかるかな?
正解は「きん」
第3問
今帰仁
いまきじん じゃあないよ。
正解は「なきじん」
わかるかっ!
日本の地名はどこもかしこも難読だけど、沖縄の地名は予想の斜め上の読み方が多くて辟易した。調べてみたらまだまだ難読地名は沖縄にたくさんあっておもしろかったので、皆さんも調べてみてくださいね。面倒なのでここには載せません。
というわけで、
ばいばい、沖縄。
沖縄はどこもかしこもポワンとした空気が流れていて、急いでいなくて、風が気持ちよくて、素敵なところだった。
そう思えるのは私が観光客だからかもしれない。
沖縄に住めたらどれだけ素敵かと思うけど、沖縄に住んでも私は最後まで沖縄人にはなれない気がする。そう思うのも、私が観光客だからだろうか。
ゆるやかに流れる時の中にも言葉に琉球王国の名残や、街並みに沖縄戦の痛みが所々に見えて、暢気なように見えても歴史に裏付いた伝統や風習があり、なんだか複雑ではあるが、沖縄というアイデンティティに土地の人々は包まれているような気がした。
沖縄の人たちは沖縄を愛していて、地元に誇りを感じている。そう思った。だって良いところだもの。
そう思うのも、私が所詮観光客だからだろうか?
わからない。
でも、何度も行きたいと思える、そんな土地だったし、旅行だった。