蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

久しぶりのデート

日は恋人の誕生日プレゼントを選びに街へ繰り出した。

7月が誕生日だったのだが、引っ越し準備があったためお祝いを先延ばしにしていたのだ。

もはやサプライズでなにかをプレゼントするのも面倒なうえ私には選ぶセンスもないので、彼女の欲しいものを彼女が選ぶために、二人で街に出た。実質、私は純粋な財布として彼女に付き従った。

 

伊勢丹へ行き、ピアスと化粧品を買い、またほかのデパートでリングを購入した。

彼女のことなので、ピアスを選ぶだけで5時間くらいかかるのでは、と危惧していたのだが、1時間もかからずに選んでしまい、逆に不安になった。

本当にこれでいいのか、もっと悩んでもいい、珍しく即決じゃないか、今日はいくらでも付き合うんだから長い時間をかけたらいいのに。そう言ったが、彼女は即決して購入した。

化粧品もリングも即決だった。

多少悩みはしたけれど、ぜんぜん可愛いレベルの悩み時間だった。

引っ越しの際にシーリングライトを選ぶのだけでも2週間以上かかっていたことを考えると、大した成長である。

 

あるいは、私の金を使うから、そこまで悩みもせずに買えたのかもしれない。……

いいのだ。プレゼントなんだから。

それにしても素敵なアクセサリーを買えてよかった。彼女の嬉しそうな顔を見ると私も嬉しくなる。いっぱい稼ごう、とおもう。

 

夕食は、お気に入りのイタリアン・レストランを予約し、一年ぶりくらいに訪れた。

どの食事も期待を外すことなく、期待以上の高いレベルを超えてくる。

この店を知ってもう3年半になるだろうか。来るたびに感動できる。

ボロネーゼが絶品で、旨味と喜びに口の中がいっぱいになって、涙がこぼれそうになった。これだけ美味しいものを作れる料理人は、自分を誇りに思った方がいい。店に手紙でも書いてやろうかしら。

「死ぬ前にもう一度来たいね」

「死の3日前だったとしても、ここに来たい」

そんな話をした。

 

今まで行ったどの店に、死ぬ前にもう一度行きたいか。

私たちはさまざまなお店に行ったし、リピートしている店も多い。

引っ越して、二人で自炊をするようになり、外食の機会はかなり減ってしまったけど、そのうちまた新しい店を開拓したいし、二人で作った食事も美味しいので、何度だって作ろうとおもう。

 

結局私は、彼女と食事をするのが好きで、彼女と食べればなんだって美味しく感じるのだ。

いつまで、美味しく感じられるだろうか。

いつからか、味気なくなってしまうだろうか。

そうならないためにも、なにか私は努力をしないといけないし、小さな幸せや喜びをしっかりと受け止めることのできる視点を持たないといけないかもしれない。

変わらないものなんて無いのだから、変化を楽しんでみよう。

既に一人の問題ではなく、二人の人生なのだから。

 

夕食を食べすぎてかなり苦しくなり、最寄駅から家までタクシーで帰った。

贅沢な一日になってしまったけど、ずっとコロナや引っ越しでバタバタして、デートの休日を過ごすことが少なかったから、なんだか新鮮な気持ちでデートできた。

 

同棲の素晴らしいところは、デート帰り、同じ家に帰れることだ。