蟻は今日も迷路を作って

真面目な話からそうでない話まで。本当の話から嘘の話まで。蟻迷路(ありめいろ)という人が書いてます。

私たちの巣作り

っ越しに伴い、家具をさまざまに買い揃え、ほとんど必要なものは既に揃った。

かなりの金がかかったが、金がかかった分だけ自分たちの納得できる部屋作りができている。

しかし、家具の購入にあたって、今回苦しめられたのは、金よりも「組み立て」である。

 

ほとんどすべての家具を私が組み立てた。自分の手で組み立てると、なんだか愛着が湧くものだ。

難易度の高かったものほど時々撫でてはちょっと恨みの節を交えて「よしよし」と言って、現在は自分の支配下にあることに安堵にも似た充足感を覚える。

これらの家具が届いたときは、すべてバラバラで、箱を開けるとカオスそのものだったのだ。

 

   ↓

 

私のベッドは私が組み立てた。

 

恋人のベッドは引っ越したその日に義父さんと一緒に組み立て、私のベッドは後日届くので、それまでは恋人と同じベッドに寝たり、マットレスに寝たりしていた。

 

先に言っておくと、恋人は家具の組み立て時にほとんど戦力にならない。

空間把握能力が著しく欠如しているため、組み立て説明書を見てもほとんど理解できないし、パーツたちを見て組み立ての順序や完成図の想像をすることが難しいのだ。

誰にだって得手不得手はある。その人ができることをやってベストを尽くせばいい。

だから恋人には「支えてもらう」程度の手伝いをさせていただけで、私が組み立てに失敗したりわからなくなってしまうと、行き詰って時間をいくらか浪費することになった。

 

恋人のベッドは義父さんがいたから「組み立てる」作戦を取れたけど、私のベッドが搬入されるときには私一人しかおらず、仮に組み立てることになったらかなり面倒くさくなりそうな予感がしていたので、ニトリにあらかじめ組み立てたものを搬入していただくようお願いをしておいた。組み立て配送というものだ。

 

そして数日後、私のベッドは、箱詰めのまま、パーツごとに分かれたカオスのまま、配送されてきた。

 

意味がわからなかった。

配達員に「組み立て配送でお願いしたのだが」といくら言っても取り合ってもらえず、運んでしまったものは仕方がないからなんとか頑張ってくれってかんじの爽やかな笑顔で無駄に励まされ、っていうか励まされる意味がわからない、私の注文と違う状態で配達しやがったのだから、そこは謝罪すべきではないのか。結局一言の謝罪もなく「ドンマイドンマイ!そんなに難しいやつじゃないから!馴れてる俺らなら10分ちょっとで組み立てられるくらい簡単なやつだからさ!兄さん一人でもいけるって!ガンバ!!」という趣旨の励ましだけ頂き、泣く泣く私は受け取り表にサインをして、配達員のお兄さんはポカリスエットがそのままあふれ出てきたみたいな爽やかな汗を流して、とっとと自分たちの巣へ帰ってしまった。

単純で憎悪の湧かない純粋な惡。そういうかんじの配達員だった。

一言の謝罪もなかったのは解せないが、配達員の上腕二頭筋の盛り上がりは私の首くらいの太さがあり、謝罪しろと強く迫ることができなかった。

部屋に、箱詰めのベッドフレームのパーツが散乱していた。

 

組み立ては大変だったが、たしかにそこまで難易度が高いわけではなく、大変さはパーツが大きいことや重いことに由来するもので、私でも30分ほどで組み立てられた。

よかった、簡単なベッドを選んでいて……。

これで組み立て何度も高かったら、私は未だにベッドで眠ることはできていなかっただろう。

そしてニトリを相手取り、訴訟を起こしていたかもしれない。配達員の兄さんを法の力でひれ伏させていたかもしれない。

 

組み立てが簡単で助かったのは私ではなく、ニトリ、お前なんだぞ。

 

   ↓

 

とかいろんなことがありつつも、さまざまな家具を組み立ててきた。

今ではパーツの多さに絶望することもなく、「木ネジ×48」と取説に書いてあってもくじけない心を手に入れた。

 

在宅ワーク中に家具を組み立て、いくつか仕事の電話をすっぽかしたこともあったが、このようなさまざまな困難を乗り越えて、愛着の湧く居住空間が完成しつつある。