前職は情報サポートデスク業務をやっていて、ユーザーからパソコンやシステムに関する電話・メールを受けたら、遠隔操作または口頭などで問題を解決する、という仕事をしていた。文字にするだけで辟易とする仕事である。
転職してからも、今の会社で情報機器に関するトラブルがあれば頼られていたのだが、正直、中途で入って機器の情報がほとんどなく、仕様も不明だし、ほとんどの機械故障の原因が「経年劣化」であることが多かったので、私に聞かれても解決できないことが多かった。
しかし今日、久しぶりに元ヘルプデスクの腕が鳴る出来事があった。
依頼はExcelに関する要望だった。
「こういうことをやりたいのだけど、できるかな?」と聞かれた。
できるかはわからないけどたぶんできるだろう、と直感的に思った。
3年もヘルプデスクで働けば勘が働くようになるもので、知らなくてもどうしたら良いのか大枠でわかるのだ。少なくとも何を調べればいいのか、どこを見ればよいのかは見当がつく。
なので「できそうな感じはします」と答えて、対象のExcelファイルをもらった。
なるほど、調べてみると関数だけではどうにもならない類のことをやろうとしているみたいだった。
つまり、マクロである。マクロさえできてしまえば、なんとかなりそうな要望だ。
しかし残念ながら、私はExcelのマクロがよくわからない。自信がない。
自分の仕事もあるので、今からマクロを勉強してプログラムを組んで、なんてことはやってられないし、外もとっくに日が落ちていた。時間がない。
でもここで諦めたらこのExcelはずっと不便なままだ。
ヘルプデスクの敗北。それはなんとしても避けたい。
とりあえず、Googleを開いて、検索してみることにした。
こういう類のものはどこかの物好きがインターネット上に解決策を上げているものと、私は知っている。日本は1億人以上の人間がいて、ニッチなヘルプ情報を載せている人はゴマンといるのである。前職ではそういったサイトにさんざん助けられてきたのだ。
いくつか検索ワードを変えてトライしてみたところ、やはりインターネットはヘルプデスクを裏切らなかった。
思ったとおりのものが、ネットに落ちていた。
あとはファイルをマクロ用にして、見やすいようにフォーマットを変えたりして、15分ほどで解決できた。
私が自分の知識を使って自力で解決したことではないけれど、前職の勘が活きた瞬間で、うまくいったときには、つい笑みがこぼれた。
依頼者にファイルを渡すと、たいへん驚かれて、そして感謝された。
この、相手の驚いているリアクションや、感謝が嬉しかったということを思い出した。
うまくいくと手応えをおぼえ、その夜の酒が美味しくなる。
ときどきはヘルプデスクをやってもいいかもしれない。