さいきんは会社のエレベーターで私以外誰も乗っていなかったら、ここぞとばかり、虚空に向かって正拳突きをしている。
合掌し、心を整え、腰を落とし、構えて、突く。
一連の動作に5~6秒、高速エレベーターはその間に私を高層階へ連れていく。
フロアに着いたら自分のデスクに戻り、メールとか返す。
「平素、お世話になっております」とか書く。「へ」と打つだけで予測変換に「平素、お世話になっております」が出てくるので、書き出しに2秒もかからない。
エレベーターに私だけだったら、正拳突きもするけど、歌を歌ったりもする。
それも、わりと大きめの声で歌う。
OASISの「Don't Look Back in Anger」とかKing Gnuの「白日」のサビとか、「おどるポンポコリン」のBメロを歌ったりする。君が代を独唱する日もある。
もしくはジャミロクワイの「Virtual Insanity」の鼻歌をしながら、MVみたいなパントマイムをする。
そんで自分のデスクに戻ったら、案件報告書の資料をまとめたりする。
ユーザーに電話をし、端末返却の催促をしたりする。
みんなは私がエレベーターの中で正拳突きをしていることを知らないし、ジャミロクワイごっこをしていることも知らない。
これをやったからなにかハッピーになれるかというとそういうわけではないし、ストレス発散にもならない。
「自分一人しかいない」という状況になったらなんかしなくちゃ損、という思考が働いて、なにかせずにはいられなくなるのだ。
その結果、正拳突きやお歌の時間が生まれるわけである。
皆さんは、会社のエレベーターに一人きりになったら、なにをしていますか?
正拳突きしたり、四股踏んだり、叫んだりしているんですか?
私は明日、エレベーターに一人になったら、無暗にぐるぐる歩き回ろうとおもう。トリプルトウループを決めてもいいかもしれない。卑猥な言葉を連呼してみようかしら。「死ね!」と叫んでみようか。
馴れるとどんどん刺激が欲しくなってくる。
自分以外の人間もこういうことしているかも。
先輩も、後輩も、部長も、課長も、オフィスのマドンナも。
そうして素知らぬ顔でメールを返したり業務報告をしているのだ。会議では眠ったり、偉そうに批判したりしているかもしれない。ファイルをサーバーに保存しているかもしれない。トラブル対応をしているかもしれない。素知らぬ顔で。
そうおもうとなんだか怖くなってきた。
誰にでも秘密があり、誰しもが他人である。それでも先輩がエレベーターの中で発狂していたらかなり嫌だな。
他人のふり見て我がふり直せ。って、みんながやっているのか知らんけど。
私もちょっとこういうことは今後止めた方がいいかもしれない。