蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

潜水艇の音

西洋で潜水艇が行方不明になった件。

今朝方に破損の痕跡を見つけたということで、搭乗者の生存は絶望的になった。

おそらく水圧で潰されたのだろうという見解だ。

ひとたまりもない水圧で、たぶん一瞬のうちに潰されて、爆発して……という顛末だと思う。

亡くなったことは極めて残念だが、私はこの「水圧で一瞬のうちに潰された」ということに、誠に勝手ながら、安堵を覚えた。

酸素が残り少なくなるなか、暗闇と寒さに曝されて、来るともわからない救助を待ち続ける、1秒が永遠のようにも感じられる絶望に比べたら、ひと思いでよかった、とすら思えたのだ。まったく身勝手なものだ。

 

昨日までのニュースでは、海底から潜水艇の側面を叩くような規則的な音をソナーがキャッチした、と言っていた。この音を手がかりに捜索を進めたという。

水圧でやられてしまった今となっては、その音がなんだったのか知る由もない。

本当になんの音だったのか?

私は、潜水艇がある水深に差し掛かった瞬間に潰されたと思っていたが、もしも、通信が途絶えてから数十時間は無事が続いていて、その間に救助を呼ぶために側面を叩いて信号を送っていて、一定時間後に水圧で潰されたのだとしたら……。

……こんなことはあまり考えないようにしている。

 

今も、この海底に耳を澄ませると、潜水艇を叩く音が聞こえてきそうで、怖い。