蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

家に「絵」が飾ってあるということ~あわいさんの絵と さめほしさんの絵を買った~

  絵を買った。

 複製や贋物ではなく、作者本人から買った本物の「絵」である。

 SNSで活躍する「あわいさん」「さめほしさん」の絵である。知っている人は知っている。当たり前だ。

 都内のギャラリーで個展が開かれ、そこでそれぞれ購入した。決して安い買い物ではなかった。精神的にも気高いものだった。

 

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 以前から、絵が欲しいと思っていた。

 母がかつてイラストレイターだったということもあり、うちは「絵」を大切にする文化があって、母が描いたイラストが数枚額装されて飾ってあるし、私や妹の描いた絵も同じように飾ってある。

 昔隣に住んでいた名前の売れていない画家の絵もある。引っ越していく際に記念に描いてくれた植物画だ。

 絵皿も10枚くらい並ぶように飾られ、昔美術館で購入した複製画も飾ってある。こんなに絵が飾ってある家も珍しいのではないか。

 そういう環境で育ったこともあって、好きな絵を購入し飾るということに抵抗感はなかった。

 

 家に自分の好きな絵を飾るということは素敵なことだと、この度2枚の絵を購入してつくづく思った。といってもまだ飾っていないのだけど。

 好きな画家の絵を自分のものにできるというのは、格別のものがある。

 なにせインターネッツ上や個展でしか見ることのできなかった絵を自分の好きなときに眺めたり見つめたり触ったり舐めたりできるのだ。冗談でもそんなことされたら刺すが。

 インターネッツや個展で衆人の目に晒され多くの「いいね」を貰った絵が自分のものになるというのは特別なことだ。好きなアイドルが家にいるようなものなのだ。

 

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 こちら私の購入した さめほしさんの絵画である。タイトルは「ひきさく」。

 抱きしめた人間が生クリームのように崩れていちごシロップが噴出している。独特な線と色分けが魅力的な画家だ。

 この絵は昨日届いたばかりで、まだ額装もしていない。飾るところも決めていないので厳重に箱にしまってある。来週額装するつもりだ。

 ところで、自分の絵なので、こうやって自分のベッドに配置することも可能なのである。好きなアイドルを自分のベッドに座らせたことありますか?ないだろう。

 私にはそれができる。

 

 さめほしさんの絵は個展で購入できるのだが、抽選となっており、買いますと言ってその場で買い手が決まるわけではない。なんらかの方法(くじびき)によって後日抽選が行われ、当選すると画廊から電話がかかってくる。

 電話がかかってきたときの興奮は、言い表しようがない。それ以上に、家に届いた時の興奮は言い表しようがない。

 現実味がないのだ。

 家に好きなアイドルがやって来て、ベッドに腰掛けていたらどうすることもできないように、私はどこか他人行儀になって、包装を解くときは童貞を卒業した夜を思い出したほどだ。

 

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 こちらは購入した あわいさんの絵である。

 

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 かわいいだろ。おれの絵だぞ。おれの所有物なんだよ。

 

 へっへっへ。

 

 あわいさんの絵は個展のその場で買い手を決める方式だった。

「これ、素敵なのでください」と言ったら「ありがとうございます」と言われ、契約、購入、個展が終了すると家に送られてくる。

 

 最初この絵を見たときに、女の子が「好きなもの」を纏って歩いているのかな、と思ったのだが、よくよく見ると、そうではないかもしれないと思った。

 女の子はいかにも真剣な眼差しで真っすぐを見ている。手には行先を決める棒を持っている。その顔は、「好きなもの」を纏っている割にはあまりに真剣で、なににもとらわれていないようだ。

 もしかしたら、この子は「自分が好きだと思っていたもの」を少しずつ解いて、自分の道を見つけ出そうとしているのではないか。流行や周りの人に勝手に好きだと決められたものから解放されようとしているのではないか。新しい自分を模索している迷いの真剣さなのではないか。そう思った。

 そう考えるくらい見つめていた絵だったので、購入したのだ。

 

 

 どちらの絵も、飾る場所を決めかねてまだ箱に入っている。

 時々取り出してはまじまじと見つめ、悦に入る。まるで懐かしい記憶に浸るように。

 だけど、絵は飾らないと自分のものにはならない。懐かしい記憶を思い出して温かい気持ちになるのと同じものではないのだ。絵はそこにある「現在」だ。

 

 夏休みになったら部屋を片付けて、絵のための場所をちゃんと確保し、自分だけの現在の時間を楽しみたいと思う。

 

 

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