蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

魚の骨を食べたくて

ワシと梅の煮物は味がとにかく好きなのだが、イワシの骨はとにかく煩わしくて嫌いだ。

魚の骨って無い方が最高だ。

魚の骨とブドウの種とレーズンパンのレーズンは3大「ない方が良いもの」とされている(レーズンパンは見た目で損してるから)。

 

イワシのちまちました骨を除きながら、つくづく骨の折れる魚よと嘆く。

小骨くらいは噛み砕くが、ちゃんと噛まないと喉に刺さって痛い目に遭うんだよなぁと思いながら食べるのでそれが食事のノイズになる。

骨の多いこと多いこと。

「安いイワシだったからね。骨が多いね」

やっぱり安いからと言って手が伸びるのはよくないなと反省したけど、そういえば骨の多寡に値段は関係ないのであった。

値段が高かろうが安かろうが、イワシの骨はすべての個体に同じ数存在する。捌いて骨を抜くしかないのだ。

 

鮭の水煮缶は骨までやわらかく、骨の食感がサクサクと美味しくて好きだ。

魚の骨を強火で揚げた骨せんべいなんかも好きで、骨ごと食べると生命を喰らい尽くしてる感が興奮する。

圧力鍋があれば魚の煮物でも骨まで柔らかくできる。

「買おうよ」と恋人に提案すると即答で「買うか〜」と返ってきた。

即答は完全同意の場合とよく考えずにとりあえず相槌打っておく二つの場合があり、この即答は後者「とりあえずの相槌」だと見抜いた。さっきから私の話を上の空で聞いてるフシがあった。回答がほぼ即答なのだ。

 

「買うか」

とは言え、うちには収納もないし、もっと必要なものがあるし、圧力鍋があったからなにができるのか「骨をやわらかくする」以外には思いつかない。

たぶん煮物とかカレーの調理時間が短くなるとかメリットはあるのだろう。しかし、正味どれほどのものなのか、さらなるメリットを把握しないと購入には踏み切れそうにない。圧力鍋があるだけで風水的に幸運を呼び込むとか、肩こりが解消されるとか、電化製品の調子が良くなるとか。圧力鍋から毎日5万円出てくるとか。そのくらいのメリットがあってほしい。

圧力鍋でできる料理を調べてみよう。

 

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ふーん。

 

なんだかんだ、骨までやわらかくなった鯖の味噌煮を食べたい。圧力鍋の存在意義はそれだけでも充分な気がしてきた。

魚は骨を食べるから楽しいみたいなところがある。あの煩わしい骨だからこそ食べると征服感を得られる。完全に魚を自分の体内に取り込んでやった感がある。

そのためならいいじゃないか。圧力鍋。

 

「買おうよ。圧力鍋。素晴らしい力を持ってるんだ。収納スペースも整理すればなんとかなるよきっと」

「はいはい」

しかし購入までにはもう少し圧力をかける必要がありそうだ。