蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

埋もれたい欲がある

  もれたい欲、がある。

    土中やコンクリートや肉布団に埋もれたいのではなく、パンケーキやプリンに埋もれたい欲がある。

    いちごゼリーや牛乳寒天を全身に浴びたい欲がある。

    プールをいちごゼリーでいっぱいにして、バタフライしたいのである。

    

    パンケーキを食べながら、ほとんど毎回私は「死にたい」と感想を述べる。

    本当に死にたいわけじゃない。埋もれて死にたいと思えるほど美味しいパンケーキだ、という称賛の意味を込めた「死にたい」なのだ。

    窒息したい。

    これもよく言う。

「このパンケーキをさ、おれの顔に思いきり叩き込んでくれないかな?そんで、おれが気絶するまで顔から離さないでほしいんだけど」

    恋人にそう言うと、彼女は馴れたかんじで「はいはい」と一笑に伏す。

    私は本気なのだが。

    最愛の恋人に甘いパンケーキで窒息死させられるなんて最高のことだと思いませんか。これ以上にない死に方だ。死、即、天国。いや、天国にいながらにして天国へ。

    もはや「パンケーキ窒息死」というフェチを抱いている。下品な話、性的な興奮すら覚える。

    変態、というのですか?

    甘んじて変態になろう。スイーツなだけに。

 

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    だけど、パンケーキを顔面に受けて殺されることも、プールにいちごゼリーを張ることも、現実的には叶わない夢だ。

    妄想か、せめて小説にでも書いて欲求を晴らすしかない。

 

    ひとつの可能性として提示したいのが、VRだ。

    VR空間にプリンのプールを設置し、そこをバーチャルにプログラム的に泳ぎながら、現実ではプリンを頬張ればよいのではないか?

    だけどそれじゃあ飽き足ら無いだろう。 妥協の産物を虚しく味わうだけだ。私がやりたいのはもっと現実的なことだ。

 

    プリンに全身塗れる、とはどういう状況なのか考えてみる。

    プリンを因数分解していくつかの「要素」を抽出し、それを再構築して情報のうえでは「プリン塗れ」を再現すればいい。

・冷たい・やわらかい・崩れやすい・甘い匂い、そういった「要素」を食べ物以外のもので再構築し、全身に塗りたくった状態でVRに接続、これで口に本物のプリンを運べばその状態は「プリンのプールを泳いでいる」と脳は処理してくれるはずだ。

 

    よし、やろう。

 

    YouTuberになったら。