蟻は今日も迷路を作って

くだくだ考えては出口のない迷路に陥っている

胃がむかむか、大地がぐらぐら

け方急に目が覚めて「?」と天井を見つめていたら地震が起きた。

昔から地震の前には目が覚める。

お、わりと大きいな、でもまだ騒ぐ大きさじゃないな、ちょっと長めだな、おさまってきた、、地震、、、と思っているうちにまた眠りに入る。

二度目の眠りの夢の中で大地震が起こる。

私は恋人に覆い被さり、ただふたりで無力に固まって、大地が割れないことを祈る。

水が出なくなる。電気がつかなくなる。ベランダから街を見下ろすと、むこうのほうで火の手が上がっている。

夢の中で私は「こうなったときのために今週末にでも備蓄を揃えた方がいい。僕の為でもあるし、彼女の為でもある。すくなくとも水とガスコンロはあったほうがいい」と鏡の中の自分に向かって喋っている。心臓にコブシをあてている。

わけはわからないが、言っていることは正しい。

 

地震が来る3秒前くらいに目が覚めるのだけど、毎回「?」となっていて、揺れを感じてから「ああ、地震予知で目が覚めたのか」とわかるので、この予知能力は意味が無い。目覚め即行動しないと3秒という時間ではなにも変えられない。

しかも変な時間に、睡眠の状態に関係なく目が覚めて、寝つきが悪くなる。朝目が覚めると胃の壁がぐずぐず爛れているような感じがする。

 

恋人に「明け方地震あったね」と言うと、彼女は「え?ほんと?」とまったく知らなかった顔をしている。

「ぐっすり眠ってた」

どうせ大地震になったら目が覚めるわけだし、私のような予知能力があっても意味が無いのだから、それならちょっとの地震でもすやすや眠っていられるくらい肝が据わっている方が良い。

「へぇ、結構揺れたんだね!え?地震のせいでそんなに眠れなかった?私はよく寝た」

それならよかった。

寝不足でむかむかする胃をおさえながら紅茶をすする。