痔の疑いがある。
痔になったかもしれない。
え?
私は何をすればいいのだろうか。
月曜くらいからかな、お尻を拭くときヒリッとして、月曜日はまぁ、その程度の痛みだったんだけど、火曜くらいからヒリッがビリッになってきて、気を付けないと「あう」と声が出てしまい、それはなにか、そう、肛門に明確な電流が走るような痛みである。
痔とは何か、調べてみる。
一言で痔と言ってもさまざまな種類があり、たとえば山陰地方の各県くらい性質がそれぞれ異なる。なぜ山陰地方を喩えに引いたのか自分でもわからないが、切れ痔とイボ痔は島根県と鳥取県くらい異なるものなのだ。
私の症状はどれにも該当しないような気がするし、どれにも今後なる可能性を秘めている気もする。
言うなれば私の肛門の問題は今のところ「赤ちゃん」、これからどうにでも成長できる可能性を秘めている、「痔のイーブイ」なのだ。
どの痔なのか、そもそもこれは痔なのかもわからないが、普通にしている分には痛みも無く存在感も無いので(普段から肛門は存在感というものが無い)、とりあえずオロナインでも塗って様子みるか、と決めていたのだが、火曜の夜あたりから、肛門が違和感という名の存在感を醸し始めた。
普通にしていて、なんだかヒリヒリするのだ。
水平線の向こうに島影が見えているほどの僅かな痛みだが、それはたしかに「ある」。
いよいよか、と思う。
認めたくない。
痔には……
痔にはボラギノール。
さっさと買うべきなのだろう。オロナインが効いていないどころか痛みを助長しているフシもあるこの時点でさっさと判断すべきなのだろう。
だが、ボラギノールを買ってしまったら自分で「痔」を認めることになり、またボラギノールが効いてしまったらそれは「痔」であるという証明になる。問題を解決したいのにもかかわらずそれに至るには「痔」を認める所からはじめなくてはならないのだが、それができない。怖い。痔にはなりたくない。
これをボラギノール・ジレンマと名付けた。
だいたいボラギノールって名前が怖い。白か黒かで言ったら黒だし、善か惡かで言ったら惡側のネーミングイメージである。ボラギノール卿が死人を操る惨状が目に浮かぶ。
25で痔か。
でも大泉洋も20代から痔持ちだったし、痔に年齢はあまり関係ないのだろう。
年齢も性別も関係ない。すべての人が痔になる可能性を秘めている。だからみんなも痔になるといいよ。いい経験になるさ。
もう少し様子を見て(怖いとかじゃなくてさ、様子を見たいだけなんだ)、増惡して出血や異臭を伴うようになったらボラギノール卿に頭を垂れ、尻を上げようと思う。
そうなったときはもう遅いのだろうか?
手遅れの前に痔を痔であると認識しないと効かない?
これもボラギノール・ジレンマ?
なにそれ?