仕事で、ほとんど事故みたいなものだけど、それでも防げたミスがあって、怒られはしなかったし、相手も腹を立てなかったし、いろいろと巻き込みはしたけど結果なんとかなったことがあったのだが、でもやっぱりそれなりに落ち込んだ。
私が入社してすぐくらいの仕事のミスが今になって発覚し、その原因も前の人からの引き継ぎミスが主な原因だったのだが、でも、私が確認をしていれば防げたことだった。
今後の改善点とするとして、飲み込むしかない。まだまだ伸び代があるということを喜ぼうじゃないか……。
そう思ってもショックなものはショックだ。
表には出さないけど気分が落ち込んでいて、なんなんだおれは、と自己否定に走っていた。
やるべき仕事はかなりたくさんあり、どれから手をつけたらいいのかも見当もつかない。闇雲で、カオスで、猥雑で、まるで『羅生門』みたいな様相だ。
ため息もつきたくなる。
だが、そのあと、あることがきっかけで気分が一転した。
別件で別の担当者から、私の仕事の出来について「とてもよい」といった言葉をもらえたのだ。
それはちょっとした「褒め」だったかもしれない。担当者からすれば、ふと言葉にしただけのものだったかもしれない。
だが、私にとってはその一粒が、暗雲を吹き飛ばしてくれた。
視界の彩度が上がった。
単純なもので、それから目の前の仕事をどう整理するか組み立てられたし、いろいろと物事を順序立て、いくつか仕事にカタをつけることもできた。明日は早く帰れるだろう。湿った暗い森から、一面の花畑に出てこられたような気分だった。
たった一言だったけど、その「褒め」が私の心を支えてくれた。
言葉はどれだけ小さくても、ある時においては太陽のように力を持つものなのだと実感した。
言葉は大切にしなきゃいけない。